「ひ・・久しぶりだね。」 コンビニで21時過ぎに、見知らぬ男達に囲まれていた莉菜を連れだし手を引いて歩いてる時にそう莉菜は僕に話しかけてきた。 『ああ。』 莉菜の家までの30分間、僕らは今までの分を埋めるように沢山話した。それはまるで久しぶりに会った恋人同士のように。
僕は繋いだその手を出来るなら離したくなかった。 莉菜の握り返す手も強く握り返してきた。
街灯が途切れる、ほんの僅かな暗闇の中で僕らは静かに見つめあった。
ほんの一、二秒の間だったんだ。 今までの気持ちが津波の様に押し寄せてきた。
凄く自然に僕らはキスをした。触れる莉菜の唇の柔らかさも忘れるぐらいお互いの舌と舌を絡めあった。
ふと、莉菜の携帯の着信が辺りに鳴り響いた。
僕らはハッと我に返って離れた。
明後日から夏休みだったし… 。 僕らの運命は動き出すんだと思っていた… きっといい方向に…
莉菜が皆に黙って引っ越したのは、夏休みが始まって直ぐの事だった。
僕は訳がわからなくて、部屋で一人泣いた。自分が失恋したのかさえわからなかった。 その後、専門学校に進んだ僕は3人の女性と付き合った。ただ誰一つとして長続きはしなかった。別れ話の時3人全員から揃って「一体誰を見てるの?」って言われた。しょうがなかったんだ、僕のなかには莉菜があの日のキスからずっと住み続けていたんだから。だから僕は彼女達にたいして、すごくズルい男だった。
次に莉菜に会えたのは、コンピューター専門学校を卒業して、久々に仲が良かったメンバーの同窓会をした日だったんだ。
莉菜はまた凄く綺麗になっていて、何故だかなんとも言えない影を持ってるように見えたんだ。
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