謙二は葛藤していた。 これからの未来、瑠佳との小さな幸福を願いたかった。
しかしまだ謙二の気持ちの中に亜樹奈を救えなかった後悔は渦巻いたままだったのだ。 ひょっとしたらまだ自分は亜樹奈への想いが棄てきれず、その淋しさを埋める為に、瑠佳を抱いたのではないか?
いやいや、瑠佳の小さな身体を抱き締めながら瑠佳をいとおしく想う気持ちは留まる事なく溢れていた。
そうだ、自分は瑠佳を抱いた事を後悔などしていないし、もっと瑠佳を欲している、禍々しい自分がいる。
それならば何故、亜樹奈の事が頭の片隅に残ったままなのか?
瑠佳と暮らし始めてから更新が滞っている、ホームページを見ながら、謙二は何度も何度も同じ迷いの中で、葛藤していた。
そして、謙二は亜樹奈の一周忌以来、寄っていない亜樹奈の墓前に脚を運ぶ事を決めた。
亜樹奈とは、男女の関係では無かったのだが、想いを伝えれなかったまま、突然逝ってしまった彼女への想いにきちんと整理をつけるために。
二人が初めての情事を済ませたあの日以来、瑠佳はよく笑う様になった。
何処か笑う事に慣れていないような、はにかむ様な笑顔だったが、確かに笑うようになった。
釣られて、謙二も瑠佳に笑い返した。
それから、二人は何度か肌を重ね合っていた。
何時しか瑠佳は事の最中に悦びを見せるようになっていた。
謙二はこのような時間がずっと続けばと考え始めていた。
しかし、“刻”の魔物は、静かに二人に近づいていた……
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