一年が過ぎた頃、
チャペル式の結婚式場では、純白のウェディングドレスを着た花嫁が、沢山の親類や友人に讃えられ、満開の笑みでそれに応えている。
花婿はその様子をこの上なく幸せな表情で見守っていた。
「うわぁ〜あの花嫁さん、綺麗〜。」瑠佳は我が事の様に喜んでいる。
『ほら、余所見すると転ぶよ。もう一人の身体じゃ無いんだし。』
両手一杯の荷物を抱えながら謙二は、花嫁に見とれる瑠佳 を見守っていた。
『来週には着れるんだし、早く車に戻ろう、これ重いっ』
「ごめ〜ん。」と瑠佳は謙二の左手にしがみついたから、思わず謙二はよろけて、前から来た女性に肩がぶつかった。
『あっすみません、大丈夫ですか?』
「ええ、お気になさらないで下さい。」
そう言うと女性は静かに通り過ぎた。
『ほら、だから危ないって』
「いいじゃ〜ん。けんじ〜」
『うん?』
「だ〜い好き」
二人からは沢山の笑い声が溢れている。
先ほどの女性は黒いコートのフードを外すと、暖かな目線を二人に送り
「幸せにね、お二人さん。」
と呟いた。
一週間後、 純白のウェディングドレスに身を包んだ瑠佳が、父親の酒井孝に寄り添われ、神父の元で待つ、謙二の横に誘われた。
二人は神の元で、永遠の愛を誓い、互いの指に指輪をはめた後、 ゆっくりと誓いのKissをした。
永く遠回りした、二人の物語は幸福な終焉を迎えて、また新たなスタートをここから始める。
闇に呑まれる事なく、また代償を払うわけでもない。
二人だけの“刻”を刻みながら。
【刻の代償】
おわり
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