ハッと意識が戻り、目が覚めると、光太郎が謙二の身体を揺さぶっていた。
辺りを見渡すと、ドゥルーシラと会うときに良くいくおでんの屋台だった。
横を見るとドゥルーシラも酔いつぶれており大きなイビキをかいて眠っている。
「会計は済ましたから、今日はゴメンねー。あと少し頑張ってねっ。」と何時ものニコニコした顔で光太郎はドゥルーシラを背負い謙二に別れを告げた。
時計は午前零時をまわり、日付は9月7日を指している。
契約終了まであと2週間を切っている。
謙二は重たい頭を抱えながら家路に着いた。
今は謙二以外は誰も住んでいない一軒家。亡き両親が祖父から受け継いだ持家だった。
5LDKの広い家の1部屋しか使っていない謙二にとって、帰宅時の静けさはよりいっそう寂しさをました。
瑠佳と暮らしていた“刻”の時間ではプラモデルが飾られたコレクション棚に今は綺麗に包装された包みが、9つある。
瑠佳が眠り始めてから、瑠佳の誕生日が来る度に謙二が用意したプレゼントだった。
一番新しい包みを手に取り、謙二はそれを買った時の事を思い出した。
真夏の暑い日だった。 真ん中に小さな石が光るその指輪を見て、謙二はそれに決めた。
指輪のサイズ変更が可能か謙二は何度も尋ねた。
目が覚めた後の色んな瑠佳を想像しながら、今はまだ現実を突き付けられる。
指輪をそっと棚に戻すと、もう祈るだけの日々ではないと改めて謙二は思っていた。
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