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作品名:刻(とき)の代償 作者:くだりゅう

第40回   seen40〜いつもそばで〜
「こんにちは、松村さん」

『あっ、こんにちは』

「謙二君、今日も頑張ってねぇ」

『こんにちは、藤村さん、体調はどうですか?』

「こんにちは、松村さん毎日お疲れさまですね〜」

『あっ、重松先生、ありがとうございます』

すれ違い様の挨拶を軽やかに交わしながら、謙二は瑠佳の病室へと向かう。


ナースステーションでは、妊婦と看護師の女性が親しげに話している。

「ねぇねぇ、菜緒子、あの人有名人なの?みんな挨拶してるけど」

「あぁ、松村さんねぇ、入院してる人や病院関係だと、有名かなぁ」

「何?何?なんかあるの?」

「恋人のお見舞いに、この10年一日も休まずに通ってるのよ」

「え?休まずにって1日も?」

「そうそう、この前なんか、事故にあったその日に、片足引き摺って駆け付けたのよ。」

「うそ〜」

「ホントだって。あれ以来、病院内で噂が広まってさ〜」

「田中さん!!」

「あっヤバッ、奈津美、そろそろ戻らなきゃ、それじゃあね〜」

「あぁ、うん。また連絡するよ。仕事頑張ってね〜……ふ〜ん、10年か〜いいなぁ〜それだけ愛されるなんて、きっといい子なんだろうな〜」



いつもの見慣れた、病室で瑠佳は今日も静かに、まるで今にも起きて欠伸でもしそうに眠っている。

窓から見える外の景色は春を迎え、芽吹きの季節を迎えている。

謙二はいつもの様に、瑠佳の手を握りしめ、返事をするはずのない瑠佳にゆっくりと語りかけている。

瑠佳が眠り始めて、10年目の日にちに、残り半年を切っていた


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