ドルーシラの行きつけの屋台が出すおでんの大根が謙二はお気に入りだった。
屋台の親父が言うには秘伝の作り方らしいが、大根に秘伝の作り方があるなんて何だか変な感じなのだけれど、食べてしまうと秘伝があると言うのも、何だか嘘に思えなかった。
ドルーシラとこの屋台にやって来るのはもう10回目位なのだが、ドルーシラはいつもここへ来るとかなり酔っ払う。
ドルーシラは不思議な女だった、淑女のようであったり、仕事の出来るキャリアウーマンな印象を受けたり、はたまた天真爛漫な少女、夜の女性の様な雰囲気だったり。
会うときは何時も印象が違う。
しかし何故だか一目でドルーシラだと気づいてしまうのが不思議だった。
何時も変わらないのは色の違いこそあれ、艶やかな髪と首から提げた大きめのクリスタルのような感じの蒼い石のペンダントだ。
ガフスは何時も口喧しい。 彼?の口振りからドルーシラはどうやらその世界があるのならかなりの高名らしかった。
「どうしたんだい?ちっとも呑まないで。」
『あっいや、仕事もあるし』
「へん、まったく、近頃の人間てのは。仕事、仕事。呆れるねぇ。」
『仕方ないですよ、生活もあるんすから』
「やれやれだね。昔は、違ったんだけどね〜〜」
今日の見た目は10代に見えるドルーシラが言うと、なんとも場違いに感じる台詞である。
「とりあえず、私が奢るんだ、飲みな。」
そう言われて、結局謙二は無理矢理、呑まされ、いつの間にか深い眠りに堕ちていった。
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