6年目…… 謙二は久々にドゥルーシラと逢っていた。
実はドゥルーシラは一年に一度ぐらいでぶらっと謙二の前に現れた。
けして瑠佳との話を深くするわけでもなく毎回同じ屋台で、酒を交わした。
それは不意に訪れる、謙二の中に弱い心が表に出そうな時に現れ、決まった屋台で共に呑み、警告とも、優しさとも言える時間を過ごした。
七年目……その年の初頭、井上と彩花の結婚式が行われた。 二人は瑠佳の分までと謙二を結婚式に招待した。
その夜、謙二は瑠佳の病室でただただ静かに泣いた。
8年目……酒井孝が倒れ入院した。
胃に腫瘍が出来ていた。早期な物で病状は重くなかったが、孝はすっかり弱気になっていた。
謙二が見舞いに行くと、「後を頼んだよ」と告げられた。謙二はいつまでも強い、お義父さんでいてくださいと告げた。 孝は謙二の事を、実の子の様に感じていると謙二に告げた。 その日、病室は男泣きにぬれた……
その年の夏、井上と彩花の間に女の子が産まれた。
酒井孝はすっかりと孫馬鹿になっていた。
瑠佳の家族が縛られた呪縛は少しづつ解かれ初めていた
|
|