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作品名:刻(とき)の代償 作者:くだりゅう

第36回   seen36〜10 years of love〜
謙二は両親の事故から暫くして仕事を辞めた。

特に理由があった訳じゃない。


未来の記憶が多少残っていた謙二は、そうすることが良い気がして、一旦働く事を休止した。


それから半年後、酒井孝の勧めもあり孝の取引先の小さな工具メーカーに就職した。


事件から一年……


この頃になると、謙二は瑠佳の実家にしばしば呼ばれる様になっていた。


瑠佳の母親の酒井楓も姉の彩花もこの頃は心から謙二を受け入れていた。


二年目が過ぎると、瑠佳の家族は、いっこうに変化のない瑠佳への謙二の変わらぬ態度に申し訳ないと感じていた。


一度、謙二に無理して瑠佳を想い続けなくともよいと話した事があった。


勿論、いつ目覚めるか判らない瑠佳の事で謙二の人生を縛るのならと謙二の事を考えての事だった。

謙二は、一編の曇りもなく……何時まで待ち続けると告げた。


三年目、瑠佳の中学の同級生が瑠佳の見舞いにやって来た。

そして、瑠佳の家族に瑠佳が高校に入ってからのいじめや瑠佳への暴行事件の話をした。彼女も最近になって瑠佳と同じ高校の子から聞いたと涙ながらに語った。


酒井孝は怒り狂い、犯人へ復讐すると息巻いた。

謙二は必死にそれを止めた。 瑠佳が切った負の連鎖を、再び繋げてはイケないと。
瑠佳が目覚めた時に、父親が犯罪者になったらイケないと。

謙二の必死の説得に酒井孝はようやく折れたのだった。


そんな折、瑠佳を襲った犯人グループの数名が何者かに襲われ、入院した。

襲われた者全てが、常軌を脱した状態となり、記憶と言葉を失いまるで(壊れた)ようにただ一点を見つめ精神的に異常をきたした様な状態だった。

謙二はドルゥーシラが関わっているのではないかという疑念が頭をよぎったが、それは胸の奥底にしまおうと固く決めたのだった。

そして瑠佳を刺した、稲本の判決がくだったが、結局の所稲本も精神的に異常をきたし、病院へ拘束された。


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