「すまないねぇ、大切な事を忘れててね」
珍しくドゥルーシラがバツが悪そうにそう話した。
『忘れた事って、まさか瑠佳の病状になんか?』
「いやいや、まったく別件何だけどね、一応アンタは五年後の未来から来たわけだから、記憶を消さなきゃいけなかったのさ。」
『記憶を消すって、全部忘れるって事ですか?そんな……』
「いやいや、早とちりしないでおくれ。あの子と私達の記憶以外さね。じゃなきゃアンタは未来の出来事を知ってる訳だから、変に介入し過ぎて、歴史を変えちまったらいけないからねぇ、とりあえず万が一って事さ。」
『あぁ、なるほど、それは……仕方ないかも』
「良かった、理解が早くて。ほら直ぐに終わるからね」
そう言って、ドゥルーシラが謙二の頭に手をのせると、何だかむずむずしてくすぐったい感覚を覚えた。
「ほら、もうすんだよ。なんか覚えてるかい?アンタが来た“刻”の世界情勢とか、知人の出来事とか思い出してみな」
『はい、え〜と、』
謙二は必死に思い出そうとしてみたが、まったく思い出せない。瑠佳との記憶は鮮明な程に残っているのに、他の事は思い出せない。
「ヨシッ、問題無さそうだね。先は長いよがんばりな。」とドゥルーシラは謙二の背中をドンッと押した。
その日、病室で瑠佳の父親の孝にあった、孝は謙二を見付けると無言のまま病室を後にした。
それから暫くして謙二は孝から呼び出された。
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