「これはあくまでも私の推論だけどね、あの子は闇に魅いられてる。あくまでもこの時間のあの子はね。」
『闇?』
「ああ、あの子の過去を聞いてね、あの子の魂は闇に見初められるっぽいだよ。」
『あぁ』
「私と契約して途中で死んでしまったら、生と死の狭間に封印されて対価を払うまで生きる事も死ぬ事もなく“刻”を払い続けるんだ。」
「ただね、あの子はあのまま死んじまったら、闇に堕ちるかも知れないよ…」
『それってどうなるんです?』
「そうさね、私の様に不死の呪いを受けて……」
『受けて?』
「永久の闇をさ迷う事になるかも知れない……」
『そんな…』
「そこでだ、アンタにはあの子の命を救うっていう契約をして貰う。」
『それじゃあ、瑠佳を助けれるんですか?』
「対価を払う覚悟があるならね、勿論多少は私も手助けはするけどねぇ。」
『対価……』
「どうするんだい?とは言え、アタシは無理矢理契約をさせても構わないが、そうなればアンタの命を依代に頂くよ。」
『もしも、10年先でも瑠佳を助けれるなら、何だってやりますっ』
ドゥルーシラは静かに微笑むと、ゆっくりと謙二の頭を撫でた。
「良くいったねぇ。じゃあ契約の内容を話すから良くお聴き」
『ええ』
「アンタには、今から10年の“刻”を捧げて貰うよ、それがアンタがアタシに払う代償さ。」
『でもどうやって?』
「じゃあとりあえず、これに名前と血判を押して貰うよ。」 と言うと、光太郎が何やら書かれた紙とペン、そして小さなナイフが乗ったトレイを机に置いた。
「あっここに書いてね、血判は右手の親指ね」と光太郎が契約書の空白部分を指差し説明した。
「ほれっ早くせんかー、名前を書くのに時間をとらせるな小僧。」と灰色の猫が謙二をまくし立てた。 『うわっ、しゃべった。』いきなりの事に謙二は握ったペンを落とした。
「おやめ、ガルフ!!!。すまないねぇ気にしないでおくれ」と落ちたペンを拾いドゥルーシラが差し出す。
『はぁ』もうなんでもありだな… さすがに謙二は覚悟を決めた。
“松村謙二”と指定された所にサインをし、指をナイフで少し切り契約書に血判を押した。
「ヨシッ、それじゃ仕上げだね。」
ドゥルーシラは契約書を丸めるとやや高めに放り投げた。
ドゥルーシラが両手を拡げ何かを呟くと、契約書は何と宙に浮き止まっている。
その内、蒼い光に包まれると、契約書は煌めくような紅い炎に包まれ勢いよく燃え上がり、煙を残して消えた……
『えっ?』
「大丈夫だよっ。これからが重要なんだ」光太郎があのにこやかな笑顔を浮かべ謙二に説明する。
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