「へ〜感心じゃない。ちゃんと通ってるんだ。」病院を後にし、謙二が駅へと向かっていると、急に声を掛けられた。
振り向くと、際どいミニスカートに黒いコートを纏った、金髪に近い髪の色をした10代に見えなくもない女性が、立っている。肩には灰色の猫が載っている。 『あ〜魔女のおばさんか〜。今日はギャルかい?』
[オイ、貴様ドルーシラ様に対していつもいつも、口に気を付けろ。]なんと女性の肩にいる猫が謙二に話し掛けてきた。 「お止め、ガフス。いいんだよ、坊やは気に入ってるからね。」
「そういや、もうすぐだよ。長かったかい?」
謙二は少し苦笑いしながら『どうだろ?仕事も変わったし、頭には白髪が出始めたけど、変わらないものはあるよ』
「変わらないもの?」
『瑠佳に対する気持ちは……もしも期限が延びても変わらないよ。それだけは言える。』
「ふふふ、まったく相変わらず可愛い坊やだねぇ。ヨシッ今日は私が奢るから呑みに行くよー」
[あっドルーシラ様。また勝手に…]
『またいつもの屋台?相変わらず好きだよね。』
「文句言うんじゃないよ、若造にはあれで充分さね。」
そう言うとドルーシラと呼ばれる女性は謙二の肩を抱き、歩き出した。
見た目は、何やら怪しいカップルに見えるんじゃないかと謙二は内心思っていた。
しかし喋る猫もこのドルーシラも瑠佳の事情を知っている。
そして何かと気を使ってくれているのかも知れない。
今夜は遅くなりそうだと謙二は思いながら歩を進めて行った。
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