「いいかい、“刻”について話すと長くなるから省略するよ。大体人に対する時間の観念は、誰かの記憶媒体にして存在するんだよ。思い出や経験、強い想いなんかが記憶や物質として残り過去を形成していく。時間移動てのはね、基本的には未来には行けないものなんだよ。未来から誰かがこの時間にきてそいつの記憶何かを媒体にしないかぎりはね。だからね。人の存在が死ぬのは誰にも忘れ去られた時さ。」
ここで謙二はややちんぷんかんぷんになってしまった。
「つまり、あの子が本来、経験するであろう時間を私が魔力で吸いとるって呪いをかける代わりに、二人をこの時間に飛ばしたんだ。まあ飛ばしたのは未来の私だけどね。」
『ああ、何となく分かります。』
「つまり、どっちみちあの子は10年間眠り続けるんだよ。私の呪いでね。」
『じゅっ10年…』
「あの子はそれを受け入れて、アンタの過去の呪縛を解こうとしたんだよ」
『そんな…俺は…』
「まったく、すれ違いなんだろうねぇ。あの子はただただアンタの幸せを願ってたんだよ」
『どうにかならないんですか?元に戻して貰ってもいい。』
「あいにくだけどね、一度交わされた契約は対価を払うまで解けないんだよ。」
『そんな…』
「それよりも、急がなきゃならない事がある」
『なんです?』
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