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作品名:刻(とき)の代償 作者:くだりゅう

第27回   seen27〜【契約】〜
謙二は多分人生で一番な程に途方に暮れていた。

刑事の事情聴取から解放されて病院に戻ったがやはりこの“刻”の中では接点のないはずの謙二には、瑠佳への面会ははばかられた。

親切な看護師の人の話によると未だ意識は回復せず、緊張状態が続いているらしい。


病院の近くの小さな公園でタバコをふかし、缶ビールを口に含んだ。

カラカラだった喉に潤いが染み渡る。

ただ味は感じなかった。

この“刻”に来る前の“刻”で二人は愛し合い、強く結ばれた。その思い出がまるでエンドレスに続く映画の様に駆け巡った。

泪は後から後から流れてくる。

ルカ…俺は君に何をしてあげたらいい…


「ちょっと、泣いてばかりいんじゃないよ。」

謙二が顔を上げると、あの時の艶やかな髪を下げたフード付きの女性がいる。

「ほらっ早く立ちな。まったくかなり計算違いだよ。」

『何なんだよ。あんたには瑠佳が救えるのか?それならどうすればいい?必要なら俺の命だって…』

「バカ言うんじゃないよ、いいかい良くお聴き。あの子を助けて上がる、その代わり」

『その代わり?』

「私と契約するんだ、対価はしっかりと頂くよ。」

『契約?どうすればいい?瑠佳の為なら何だってする』

「そうかい。嘘じゃないね、今から私の店についておいで。改めて説明するからね」


そう言われて、コートの女と謙二は公園を後にした。


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