謙二は、息を切らしその影を追いかけた。
もう一度、瑠佳と話したい。
理由なんて……
瑠佳の声が聞きたい、もう一度……
ハァハァ、久しぶりに走って短い距離なのに息はもうあがっている。
膝も笑いかけていた。
もう一度曲がり角を曲がって女性を見つけた。
何とか追い付いて、女性の肩を叩いた。 『瑠佳!』
女性はショートヘアをなびかせて、謙二に振り向いた。
「……きゃっ」
???
振り返った女性は瑠佳とはにつかない別人だったのだ
「な、何ですかアナタ、」
『あっごめんなさい。すいません』
謙二は低頭に謝罪しその場を後にした。
考えてみれば、自分は5年前の自分に戻っていた。 瑠佳がこの時間にいるなら瑠佳も……
ハッ 亜樹奈……
亜樹奈の存在を思い出し、謙二は重い体を引き摺って元の場所へと走り始めた。
大通りに戻った謙二は久々の運動に頭がクラクラとぐらついた。
『亜樹奈。』
亜樹奈は呆れて、先に行ってしまったのかもしれない。
謙二は天を仰ぎ、自分の考えのなさに嫌気が差してしまう。
走った疲れと一連の喪失感に近くの石垣に腰を下ろした。
ポケットの携帯に手を掛け亜樹奈に連絡を入れる。
直ぐに発信を告げる電子音が耳に流れてくる。
と同時に、何処かで着信音が鳴り響いた。
ん?
(どうして電話に出ないんだ?)
12回目の呼び出し音を聞くと、近くで流れている着信音もまだ途切れずに流れている。
なんか変だ。
謙二は着信音の鳴る方へと歩き出す。
丁度、公園の別の入り口の方から聴こえてくる。
入り口の車輪止めの処で謙二はその音源を見つけた。
亜樹奈の携帯に似ている。
ディスプレイには謙二の名前と番号が表示されている。
『クソッ』
『クソッ、クソックソッ。』
謙二の頭に激しい程の警笛が鳴っている。
『ア゛ーー』
脳裏に、亜樹奈が刺された時の場面がフラッシュバックする。
(考えるんだ、何処だ、何処だ?)
亜樹奈の携帯を握りしめ、謙二は公園の中へと走り出した。
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