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作品名:刻(とき)の代償 作者:くだりゅう

第20回   seen20〜疾走〜
謙二は、息を切らしその影を追いかけた。

もう一度、瑠佳と話したい。

理由なんて……

瑠佳の声が聞きたい、もう一度……


ハァハァ、久しぶりに走って短い距離なのに息はもうあがっている。

膝も笑いかけていた。

もう一度曲がり角を曲がって女性を見つけた。

何とか追い付いて、女性の肩を叩いた。
『瑠佳!』

女性はショートヘアをなびかせて、謙二に振り向いた。


「……きゃっ」


???

振り返った女性は瑠佳とはにつかない別人だったのだ


「な、何ですかアナタ、」

『あっごめんなさい。すいません』

謙二は低頭に謝罪しその場を後にした。

考えてみれば、自分は5年前の自分に戻っていた。 瑠佳がこの時間にいるなら瑠佳も……

ハッ 亜樹奈……

亜樹奈の存在を思い出し、謙二は重い体を引き摺って元の場所へと走り始めた。

大通りに戻った謙二は久々の運動に頭がクラクラとぐらついた。

『亜樹奈。』

亜樹奈は呆れて、先に行ってしまったのかもしれない。


謙二は天を仰ぎ、自分の考えのなさに嫌気が差してしまう。

走った疲れと一連の喪失感に近くの石垣に腰を下ろした。


ポケットの携帯に手を掛け亜樹奈に連絡を入れる。


直ぐに発信を告げる電子音が耳に流れてくる。


と同時に、何処かで着信音が鳴り響いた。

ん?

(どうして電話に出ないんだ?)

12回目の呼び出し音を聞くと、近くで流れている着信音もまだ途切れずに流れている。

なんか変だ。

謙二は着信音の鳴る方へと歩き出す。


丁度、公園の別の入り口の方から聴こえてくる。


入り口の車輪止めの処で謙二はその音源を見つけた。


亜樹奈の携帯に似ている。

ディスプレイには謙二の名前と番号が表示されている。

『クソッ』

『クソッ、クソックソッ。』

謙二の頭に激しい程の警笛が鳴っている。

『ア゛ーー』

脳裏に、亜樹奈が刺された時の場面がフラッシュバックする。

(考えるんだ、何処だ、何処だ?)

亜樹奈の携帯を握りしめ、謙二は公園の中へと走り出した。


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