謙二は亜樹奈を連れて公園の近くの大通りを選んで歩いた。 人通りの多い場所を選べば稲守も易々と手を出せないと考えたのだ。
「ちょっとー、公園突っ切った方が速いじゃない。なんでわざわざ遠回りするのよー」
(まさか、公園にナイフを持ったストーカーがいるなんて言えないし……)
『ほら、こうして二人で会えるのも、少なくなるし、ゆっくり行こうよ。』
多分、嘘くさい苦笑いを浮かべながら謙二は必死に説明した。
亜樹奈を連れて歩き始める。
今日は何だか人が少ない、謙二はそう感じていた。
瑠佳は今、何処にいるんだろう……
謙二はそんなことを考えていた。
瑠佳がドゥルーシラに何を対価に、自分をこの時間に送ったのだろうか? それとも……この時間に送られたのは自分だけ何だろうか、瑠佳もひょっとして……
不意に謙二の鼻に、嗅いだことのある香水の匂いが漂ってきた。
ビルの角を見慣れたショートヘアが曲がっていく。
『……瑠佳……』
謙二は亜樹奈を置いて、ビルの角へと走り出す。
「ちょっと、謙二、何処行くのよー。もうー」
「…………?……なんで…」
謙二は、異変に気付かずに瑠佳に似た人影へと向かっていた。
|
|