暗闇の中で外灯に照らされて、男性は辺りを気にせずに泣き崩れていた。
瑠佳は何故だか、男性と自分がダブって見えた。
未来を奪われてしまった。 似た二人。
瑠佳は暫く、其処に立ち尽くしていた。
泪はまだ止まらない。
ふと、頭に手を乗せられた。
振り返ると、ドゥルーシラがいる。
瑠佳は思わずドゥルーシラに抱き付いた。
「見ちまったんだね、まったく、天の意識てのは、容赦なしだね。」
「いいかい、今回は対価無しで記憶を封印してあげるよ、ただし…」
「対価無しの、封印だからね、完全じゃないよ。いつか思い出すかも知れない。」 瑠佳は声にならない声をだし、ドゥルーシラを見詰める。
「だけどね、こうしないとアンタは完全に闇に呑まれちまう。アンタはまだ間に合うさ、アタシの代わりになんかなっちゃいけないよ。」
そう言うと、ドゥルーシラは瑠佳の頭に手を翳し何かを唱え始めた。
瑠佳は体の力が抜けて行くのを感じながら、安らぎを感じていた。
気がつくと、瑠佳は家の玄関の前に立っていた。
男性が泣き崩れていたのは覚えている。
しかし何故それを見たかが解らない。
両親に叱られながら、部屋に向かい瑠佳はベッドに身体をゆるすと深い深い眠りについていった。
何故だか、今日は凄く疲れた……
瑠佳は相変わらず、半分引きこもり生活を送りながら日々を過ごしていた。
10月になり、両親から転校を勧められた。
内心、瑠佳は両親が何処まで気付いたのだろうかと心配になった。
ただ父親から、「瑠佳、俺達の為にいい子になろうとしなくていいんだよ。だから……もう我慢するな。強い子じゃなかろうと、お前は私達の愛する娘だ。」
そう言われて迷っていた瑠佳は心を決めた。
両親も姉も、泣いている……
瑠佳は自分が一人ではないのだと、その時に気付いた。いや忘れていたのを思い出したのかも知れない。
それから瑠佳は県外の女子校に転校した。
ただずっと瑠佳の心のすみには、あの時泣き崩れていた男性の姿が残っていた。
高3の時、インターネットをしていた瑠佳はたまたま、謙二のサイトを見つけた。
妙に気になって、コメントを書いてみた。
謙二からのたどたどしいレスがなんだか可愛かった。
それからちょくちょく瑠佳は謙二のサイトにコメントを残していた。
謙二がメルアドを載せて来たとき、何だか妙に心がくすぐったかった。
不意にみた頬を染めた自分の顔を観て、更に恥ずかしくて堪らなかった。
返事をするのに二時間かかった。というか送信ボタンをクイックするのに二時間かかった。
ほのかに感じた心地よい胸の痛みが、瑠佳に自分は変わったかもと感じさせていた。
そして瑠佳は、謙二と恋に堕ちていった。
謙二と一緒にいるときの瑠佳からは深い闇は消えていった。
そして、瑠佳はとある事から、運命の引き金を引いてしまう。
|
|