15歳の時の部屋に戻り、酒井瑠佳は声を圧し殺し泣いた。 今いる部屋は瑠佳にとって辛い過去ばかりが思い出される場所でしかなかったから…
高校生になって、新たな生活を夢見ていた瑠佳にとって入学から僅か3ヶ月に起きた事は、瑠佳の心を殺してしまうには充分なものだった。
新しいクラスメートがイジメにあっていたのを庇ってから直ぐにターゲットは瑠佳に変わった。
その時庇った相手からも、中学からの友達だと思っていた人物からも嘲るような笑みを受けた。
段々と段々と瑠佳の心はその光を無くし、ガン細胞に蝕まれるようにその躍動を消していった。
暫くすれば、きっと…そう思いながらその辛さに耐えていた瑠佳の心を破壊したのは、激しい雨の降る日だった…
その日も瑠佳は何時ものように只の嫌がらせだけだと思いながら耐えていた。
しかし事態は、エスカレートしてゆき、瑠佳は数人の男子生徒に暴行された……
抵抗しても恐怖感と圧倒的な力から逃れる事が出来なかった。
遂に瑠佳は抵抗する力さえ無くした。
激しく振り付ける雨の中を帰りながら瑠佳の心には深い深い闇だけが堕ちてきた。
涙さえも、途切れる程に……
その日から瑠佳は殆ど部屋から出ることは無かった。
この世界から消えてしまいたい。
それだけを願っていた。
この世界から消えてしまいたい……
それともこの世界を消してしまいたい…
手にした小さなナイフに光が当たりキラリッ瑠佳の顔を照らしている。
何度も何度も自ら命を絶とうかと思った。
それとも、自分をこんな目に合わせた人間を消してしまおうかとも思った。
実際にはどちらにも踏み込めない自分が嫌になっていた。
忘れてしまおう……
憎悪、喪失感、自己嫌悪。
渦巻くネガティブな感情に瑠佳はだんだんと闇に呑まれていった。
消えたい……消したい……壊してしまいたい……
どうして自分がこんな目にあったのか? 自分に悪いとこがあったのか?
どうして助けたあの子はあんな風に笑っていられたのか?
瑠佳は、途切れる事のない答えのない疑問を抱えながら2ヶ月を過ごした。
食事すら喉を通らず、9月が始まる頃には、体重が10kg近く落ちていた。
生きる目的、生きる術、悦びを瑠佳の闇に呑まれて目は見つける事が出来なかった。
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