20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:みどりの孔雀 作者:zamazama

第1回   夕焼け
 “土をにらんで
  聖アルゴスのクジャク
 
 スープを作ろう
  ニワトコの苗と

 犬をすこうし
  猫をちょっぴり
 
 鍋を煮立てて
  一昼夜

 つぎの朝には
  できあがり
 
 しゃっくり木切り
  小鬼の木

 赤ん坊泣いても
  包丁みがけ

 血の雨走れ
  イボとれろ”




           (ゆりかがカンバーランド王国の
               イパメルから教わったおまじない)





   第一部  家の近くで・・・



              夕焼け




 ゆりかはせまい、せまい空き地の隅っこに積み上げられた、丸い、丸い土管の上で、さっきから足をぶらぶらさせて、西の空をながめていた。早くも日はかたむき、あたりには夜の気配が立ち込めると、そこかしこの小さい家々からは、夕食の支度にとりかかっているらしい物音が聞こえてくる。
 しかし、ゆりかは家に帰るつもりにはまるでならなかった。頭の中では、さっきからいやな考えがうずを巻き、ゆりかを苦しめていたのだ。
 (学校さえなかったらなあ。家で勉強できたらなあ・・・まるで毎日、牢獄だもの)
 ゆりかは内気で、体育が大の苦手だった。
 今日も朝から飛び箱とマット運動があり、四段飛びができなかったゆりかは、みんなの見ている前で、何回も飛び直しをさせられ、べそをかかされたのだ。
 家に帰ろうと、土管の上で身支度を始めたゆりかは、空き地の隅で、何か小さな光るものを見つけた。
 そばに駆け寄って、確かめてみると、
「まあ、ブローチだわ! きれいな花びら模様の、銀色のブローチよ!」
 真ん中に真紅の宝石がはめ込まれ、今にも吸いこまれてしまいそうなほど、きれいだった。
「これ、本物の宝石じゃないわよね? おもちゃなら、私がもらってもかまわないわよね? あっ、いけない! 今日はテレビで『パーマン』があるんだっけ!」
 ゆりかは急いで、ブローチをポケットにしまうと、あわてて土管に駆け戻り、ランドセルを背負って、一目散に駆け出した。
 空き地の隅っこに、突然、凸凹した二つの人影が現われた。
 見るからにちぐはぐな、のっぽとふとっちょの、黒づくめのマント姿の二人組だ。二人はゆりかを見送ってから、風を巻き上げて消えた。
 まるで、よくないことの、前触れか何かのように・・・。





次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 10412