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「右手を上げて」 「こうですか?」 「よろしい。左手は穴の開いた聖書の上に。わたしの言うことを繰り返して。前を向いて」 「むずかしいのね。はい、どうぞ」 「わたしはアメリカ合衆国の国旗と――」 「わたしは――アメリカ合衆国の――こ、国旗と――」 「その国旗が象徴する全ての人々に、自由と正義を賜 (たま) わる――」 「その国旗が象徴する――す――全ての人々に――ええと――」 「自由と正義を賜わる――」 「じ、自由と――正義を――賜わる――」 「神のもとに統一された共和国に対して――」 「か、神のもとに――統――統一された――きょ――共和国に対して――」 「忠誠を誓います」 「忠誠を、誓います。死が二人を分かつまでね。アーメン!」 「これこれ、勝手に文句を変えてはいけないよ。これできみは晴れてアメリカ市民だ。ようこそ、アメリカ合衆国へ! 大統領と国民になりかわり、心からきみを歓迎するよ。おめでとう、〈天使〉」 「リリー・センチメンタル=デジャ・ヴュです、博士 (サー)」 「ううむ。ともかく、移民おめでとう!」
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