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作品名:マイティーリリー 作者:zamazama

第38回   38
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「かような次第で、あなた様を《莢》(さや) に納めたあとで、王宮は一時、暴徒たちの群れに占領されましたのです」
 と、バハールが続けていた。
 そこは月の宮殿の地下にある、水晶石を安置した石室の中だった。
「国王様と王妃様も、あわや捕まって民衆になぶりものにされるところを、暴徒たちの中にまぎれ込ませておいた王宮側のスパイの手引きで、間一髪、城から脱出されたのでした。暴徒たちは、ほどなくして駆けつけた辺境派遣軍が蹴散らし、一時的に退却させることができましたが、あやつらが陣営を盛り返してふたたび攻め込んで来るのは、火を見るよりもあきらかでした。
 その晩、かろうじて取り返した王宮に集った首相や閣僚、われわれ王宮に出入りを許された、永久僧侶の身分を持つ神官団の面々は、国王様と王妃様を国外の植民地に脱出させるべく策を練り、あなた様がとられたのと同じ、《莢》の中にお二人を忍ばせて、夜陰に乗じて運搬用のはしけで、運河から外海へと運び出す計画を立てました。その頃までには、首都の周囲が暴徒たちに包囲されていたのはわかっていましたから、そうでもしなければ、都を出る前にお二人は捕えられ、どんな目に合わされないとも限りませぬ。あなた様がお付きの乳母の手で、一足先に同じ方法で、《莢》の中にお逃れあそばしたことは知らされていましたから、あとはあなた様の入られた《莢》と、王様、お妃様の三人分の《莢》とを持ち出せばいいだけでした。
 ですから、わたしたちがみんなして王宮の地下の隠し部屋に赴き、そこが荒されて空っぽになっているのを見つけた時の、われわれのおどろくまいことか!
 憎むべき暴徒たちは、王宮を占領してから、辺境派遣軍が駆けつけるあのわずかのあいだに、王宮の秘密の施設を襲い、中に隠された国家の大事を、すべて破壊するか持ち去ったかしたらしいのです。短い時間にそんなことができたのは、王宮の中に、暴徒に通じた裏切り者がいて、手引きしたのに相違ありません。
 われわれはすっかり意気消沈してしまいました。あなた様が眠っていたはずの《莢》も、一体どこを探したものか、暴徒たちが手に入れたものか、それとも王宮の者が気をきかせて、先手を打って外に持ち出したものか (そうであったらどんなにいいか、われわれは何度も話しあいました)、皆目見当もつきません。われわれにあなた様のことを告げた乳母も、夜が来る前に暴徒たちの手にかかり、息を引き取っていましたから、それ以上詳しく探ることはできませなんだ。
 とりあえずわれわれは、あなた様の消息を尋ねることは後回しにして、国王様と王妃様の身の安全と、怒り狂った暴徒の群れを鎮めることに、専念しなければなりませんでした。
 その頃、王宮に出入りを許された神官たちの中に、カバール様という名の、たいした実力を持つ僧侶がいました。
 たいした実力といいましたが、実際のところ、その時は名ばかりになっていた王室や政府になりかわり、実質的に国の実権を握っていたといってもいい、偉大なお方でした。
 カバール様は国政にあからさまに口出しすることなく、巧妙に張り巡らせた糸を巧みに操って、神殿の中から思うままに国の支配勢力を動かしていたのですが、一方であのお方は、それはそれはたいした科学者でもありました。カバール様は僧侶たちの中から、かれの目にかなう幾人かの弟子を選り分けると、かれの《実験》の手伝いをさせていたのです。何を隠そう、このわたくしめも、その弟子の一人にございます。
 カバール様は王宮が暴徒たちに襲われたことを知ると、今こそ自分が表に出る時が来たのだと悟りました。かれはかねてから手なずけていた王室直属の軍隊に命じ、首都と全国とに大規模な動員令をかけると、国家の大権を一時的にわが手中におさめ、とうとう名実ともにアトランティス世界の全権力を手に入れたのです。
 世襲制と厳格な身分階層が定められていたかの世界にあって、とうとう名もない僧侶が、国家の中枢を握る時がきたのです!
 われわれ僧侶たちは、身の震える思いがしました。
 われわれは、外見はいかにも、わが国の行く末をおもんばかるふりをしながら、内心ではほくそ笑んでいました。と言っても、お叱りになられますな、王女さま。われわれとて、生身の人間。いかに修行を積み、この世のものならぬ至高の存在に、われとわが身を捧げる誓約をしたとはいえ、やはり地上のこの世的な権力の前には心がぐらつき、誠心を守り通す決意も、鈍るものなのでございますよ」バハールはふいにリリーを見下ろした。
「だが、それも今となっては、間違いだと悟りました。王宮になりかわって、僧侶たちが支配の実権を握って間もなく、一進一退を繰り返していた、暴徒たちと王宮側の戦いも、じょじょにわれわれ支配者側が圧倒されていくと、軍隊の中から民衆に寝返る者や、脱落者が大勢出て、首都が陥落するのも、はや時間の問題と思われました。
 わが方に勝ち目がないと知るや、カバール様は――ああ、われらが僧侶たちに、神の呪いあれ!――かれら無知蒙昧な暴徒たちに、この国をゆだねるよりは、いっそこの世界を滅ぼしてしまおうと考えたのです。
 まさか、そんなことを思いつくほど精神に異常をきたしていた者に、なんでわれわれが唯々諾々と従っていたのかと、お考えですかな? わたしも今となっては不思議でなりませぬ。だが、あの時には無理でした。あの時には冷静な判断を下すことが、できませなんだ。攻め寄せる暴徒たちの群れと、残虐なことどもを見聞きする毎日とに、われわれの精神はささくれだち、正常な判断力が働かなくなっていたものと思われます。
 われわれ僧侶団や、生き残った内閣の面々は、カバール様の口から、あの『最後の考え』を聞くと、一も二もなく賛成しました。きっとその瞬間のわれわれは、血に飢えたモルケ・ポラッケのように見えたに相違ありませぬ」
 リリーは、「モルケ・ポラッケって、何よ?」と訊きたかったが、我慢した。
「アトランティスを滅亡させたのは、他ならぬわれわれ神官たちでしたが、滅亡に手を貸したのは、あの石でした。いいえ、正確に言うならば、地球にあるあの石と、もう一つの月にあった、あの石の姉妹石なのでした。
 おどろかれますな。この宇宙には、この月とはもう一つ別の月が浮かんでいたのです。かの世界では《ハイリ》と《インレカ》と呼ばれていましたな。さよう、ここが《ハイリ》です。なくなったのは《インレカ》の方でした。
 あの頃のことは、思い出すのも恐ろしい気がします。手短に話してしまいましょう。
 カバール様がとった最後の手段とは、《インレカ》を地上に落下させることでした。
 いいえ、嘘ではございません。カバール様はツーオイ石の作用と反作用の力を利用して、暴徒たちの真上に――その頃までには、アトランティスのあちこちで勝利を治め、新しい支配者然として、かの世界をわがもの顔に濶歩し始めたあの憎むべき輩どもに、一矢を報いようと考えたのです。
 いかにかれら暴徒どもが勝利を治めたとはいえ、所詮は血に飢えただけの、知識にも教養にも欠けた愚民どものことです。われわれが、月の一つを地面に落とすのを目のあたりにすれば、いかなかれらでも恐れおののくに相違ありません。もちろん失敗すれば、それはわれわれの死をも意味していましたが、われわれはいっこうに気にもとめませんでした。それほどにも暴徒たちに敗れたのが悔しかったのです。かつてわれわれが君臨し、支配していたところの下層階級どもに、今やわれわれの方が命乞いをしなければならぬほど落ちぶれ果てたことに、われわれ上流階級一同は、深く絶望し、屈辱を感じていたのでした。そこで、われわれはカバール様の提案に、一も二もなく賛成しました。
 わたしはその頃には、あなた様を収めた《莢》を見つけ出す大任をおおせつかっていましたが、何しろあの混乱です。とても手がかりなど探す余裕はありません。あなた様の行方を探させるため、各地に派遣した斥候たちも、一人また一人と行方不明になると、次第にあなた様のことは、口の端にものぼらなくなりました。国王様も王妃様も、また閣僚の主だった面々も、口にこそ出しませんでしたが、あなた様はてっきり暴徒どもの手にかかって、お亡くなりになられたものと、覚悟をされていたのです。そしてそのことが、なお一層、皆の報復の念を煽りました。
 カバール様の首尾がうまくいくように、アトランティスの全地に、もっとも被害が及ぶように落下位置を計算し、惑星暦を参照すると、《インレカ》がそれにふさわしい、もっとも適した位置に来るのはいつか、計算につぐ計算を重ねました。われわれ神官団はこの手の数学と天文学には、ことのほか長けていたのです。
 忘れもしません。それはアトランティスの暦でいう《クガレの月》の八日、現在の暦に直すと、紀元前八四九八年の、三月下旬の大新月の夜のことでした (大新月というのは、当時の二つの月の新月が、ぴたりと重なる日のことです)。
 先ほども言いましたように、わたしはカバール様の弟子で、その頃にはカバール様にも一目置かれるほどの、《右腕》といってもいい、全幅の信頼を受けていましたから、カバール様がとった具体的な手段については、カバール様と全能の神についで、知っていなければならない立場です。
 しかし、カバール様がいかなる方法で、月を落下させる目的を達したのかは、今となっても、しかとはわかりません。それほどカバール様は周囲を信用せず、《実験》の肝心の部分については、わたしどもにもひた隠しに隠していたのです。
 あれから長の年月が経ちましたから、わたしも色々と考えたり、思い出したりする機会がありましたが、それまでに立ち合ったカバール様との数々の実験や、カバール様が決して見せようとはしなかった、あまたある禁断の書物に書かれていた、秘密の教義の断片 (わたしはそれらの草々を、カバール様の留守に盗み読みしたのです)、またはわたし自身が突きつめた考えを考え合わせると、以下のような推論を、わたしは導き出すに至ったのです。
 あのツーオイ石は、どうやら地球にあたりまえに生まれた鉱物というよりも、宇宙から飛んできた、あるいは運び込まれた石らしいのです。(われわれアトランティス人の民族的起源が、宇宙にあることをお忘れなく。)
 どうやらあの石は、かれら根源人種たちが地球に飛来した際、ともに運び込んだものらしく、少なくともカバール様はそう考えていたようでした。カバール様が洩らした言葉や、書き物に残したことをつなぎあわせると、師はあの石が単なるエネルギーの源泉ではないばかりか、どうやら思考する力を持った、不思議な生き物だと考えているようでした。
 カバール様はツーオイ石の持つ《作用と反作用》、および《呼応力》を使うつもりだと申していました。その頃のわたしには、何のことかまるでわからなかったのですが、今となって考えるに、あそこに最後の一つが浮かんでいるあの石どもには、ちょうどある種の下等な生き物がそうであるように、互いに離れた場所からお互いの存在を知る感応力と、ある種の神秘的な媒体を発生させる力とが備わっていたらしいのです。
 『あいつらは石ではなく、生き物なのだ』
 と、カバール様はよく口癖のように、わたしに言っていました。
 『あれらは生きていて、われらが考えも及ばぬほどの長の年月を、思考し、熟慮し、哲学し、思索し、計略に耽ってきたのだ。われわれはあの石を、ただの万能の便利な道具として使ってきたつもりかもしれないが、本当に使われているのは、実はわれわれの方だったのかもしれないぞ、バハールよ』
 『それはどういう意味でしょうか、師匠よ?』
 わたしが尋ねると、カバール様は笑っただけで、答えてくれようとはしませんでした。
 確かにカバール様は、われわれアトランティス人たちの知らない、あの石の秘密に気がついていた、数少ない人間の一人だったようです。
 それはともかくとして、カバール様は計画にうってつけの日付けを選ぶと、自分の研究用に作った秘密の寺院にとじこもり、いよいよ世紀の実験に、とりかかることになったのです。
 起こったことはある意味で、とても単純なことでした。
 その頃までに、初期の移民船によって二つの月に運ばれていたツーオイ石は、すでにその世界に人類の橋頭堡を築くべく、威力を発揮していましたが、カバール様はそれらの月にある二つの石と、地球にあるツーオイ石とのあいだに働いていた、相互の感応力と引力・斥力とを利用して、どうにかして月の軌道を変えることに、成功したらしいのです。
 落ち始めたのは《インレカ》の方でした。
 あの名もない詩人が謳った《官能と美の月》インレカが、地球をめぐる軌道をはずれて、見る見るうちに迫って来たのです!
 その時全地に起きた騒動と混乱は、とても口に出しては語るすべがありません。暴徒どもは泡を食って遁走を始めましたが、その早さはわれわれの予想以上でした。かれらはま
ったく腰砕けになり、われわれの不正を糾弾した時の勢いや勇ましさは、露ほどもありませんでした。それどころか、地面に這いつくばって命乞いをする者や、恐怖のあまりに気が狂い、われとわが命を絶つ者が続出しました。
 インレカは今や恐怖の妹と化して、地球に迫ってきました。最初はカバール様に味方していた僧侶たちや、一緒になってその考えに賛成していた支配階級たちも、起きたことのあまりの凄まじさに恐れをなし、カバール様に平伏せんばかりにして、どうにかして月を元の位置に戻してくれるように乞い願うのでした。
 カバール様の返事は、全く素っ気ないものでした。
 『一度軌道を離れた月を、元へ戻すすべはありませぬ』
 続いて起こったのは、凄まじいばかりの恐慌でした。正気を失った人間の行う、ありとあらゆる愚行や、思慮を欠いた無分別なふるまい、ありとあらゆる残虐が、いちどきに地にはびこりました。そうなったら情けないもので、初めはカバール様により頼んでいた、支配階級や上流階級たちは、我先に安全な場所を求めて、避難を始めました。だが、どこへ逃げられましょう! 小ぶりとはいえ、月が丸ごと一つ、地球に落ちて来るのです!
 いちいち話すことは避けますが、かなりな数の人間が発狂し、幾つもの小国が滅亡しました。インレカはわれわれの空しい全ての絶望、われわれの歯ぎしりするような、後悔と苦悶をあざ笑うかのように、徐々にその顔 (かんばせ) を地上に近づけ、夜となく昼となく、われわれ生きとし生けるものを、傲然と眺め下ろすのでした。
 インレカの接近にともない、地球と二つの月のあいだに働いていた、力の均衡が崩れ、地上を大暴風や津波や地震が襲いました。ただでさえ脆くなっていたアトランティスの地盤はさらに弱まり、いくつもの町が地面に飲み込まれ、数知れない島々が波間に沈みました。ああ! その時のこの世界の、かくも恐ろしかったこと!  やがて、インレカは地球に衝突しました。場所は今の地球の呼び方でいう、ユカタン半島の沖合、あなたの数え方でいうと、紀元前八四九八年の、六月五日午後一時頃のことです。
 激しい衝撃波と地震が、地球の全地を覆いました。地割れと高波がこの惑星を一周し、互いにぶつかりあって砕け散りました。大勢の生き物が死に絶え、大地が割れて海に沈みました。
 アトランティスも例外ではありませぬ。かの栄耀栄華を誇った華々しい一大文明圏、全地にあまねくその名を知られた、かのアトランティス王国は、かくして歴史の表舞台から、姿を消し去ったのでありまする」
「ふうん、そうだったの。そんなことがあったのね」
 リリーがようやくのことで口を開いた。
「ヘイシーさんの手紙にも、そんなことが書いてあったけど、わたし、事実だとは思わなかったわ」
「そう思われるのも、ご無理はございません。しかし、今話したことは真実なのです。事実このわたくしめが、アトランティス滅亡の瞬間を、この目で見届けたのですからな」
「わたしがわからないのは、そこよ。どうしてあなただけ助かったの? わたしは、どうして助かったの? 月がぶつかって、みんな滅んでしまったのなら、あなたとわたしだけが、生きているのはなぜ?」
「逃げ出したアトランティス人たちがいるのです」バハールが言った。
「インレカが地球に落ちてくる、あのわずかのあいだに、他の大陸に逃げ延びた者たちがいたのです。かれらは脱出した先で定住し、世界各地にアトランティスの後継文明を残そうとしましたが、それらの中には、往時のアトランティス文明に匹敵するものは、一つもありませなんだ。だが、その片鱗はいくらかはうかがえます。  かれらは自分たちが、かつては地上に君臨し、選ばれた民であった誇りを忘れないよう、各地に寺院や神殿を建立し、自分たちが身につけていた黄金文明を、移住先でも継承しようと企てましたが、どれも日ならずして退化し、あるいは祖先たちに関する記憶が薄れ、どれも定着したものはありませなんだ。
 アトランティスの文明を形だけ真似ようとしても、あれらがツーオイ石の介在なしには存在しえなかった事実を考えると、受け継ぎに失敗したのも、無理はありませんですがな。
 ですが、それら移住者たちの努力が、すべて水泡に帰したかというと、そうとばかりも言えませぬ。かれら脱出した者たちの中に、どうやらあなた様の入った《莢》を持って、逃げ延びた者がいたようなのです。
 みどもは、途方に暮れるほど長の年月にわたって、その痕跡を調べ尽くし、あなた様がこの世界に生きているという事実を――本当に嘘ではないのか、何かの間違いではないのかといぶかりながら――とうとう突き止めることに成功いたしました。かれらはあなた様が、かの世界の支配者のお世継ぎで、しかも大いなる恵みを受けた《神の子》であることを覚えていたに相違ないのです。
 かれらは脱出した先に神殿を作り、あなた様の眠る《莢》を安置すると、原住民たちには、あなた様が星の世界から来た《聖なる神の子》であると教え込み、あなた様がいつの日か目覚める時にそなえて、野蛮人に特有の、強固な思い込みと迷信の力を利用して、あなた様を代々、守らせることにしたらしいのです。それがあなた様が助かった理由です。
 わたしの場合も同様でした。わたしはカバール様から教わった《不老不死》の術をわが身にかけ、いつの日かアトランティス世界の再興を、この目で見んものと、長の年月を一人で生きながらえることに、決意を固めたのです。ですが、その術はわたしを不死の体には変えましたが、不老の方は駄目だったようでして。わたしは死よりも辛い、老いの地獄を長の年月に渡って耐えながら、今もこうしてあなた様の目の前で、生き恥をさらしているような次第です。
 わたしは何万回も、いえ何千万回となく死を望みました。しかし慈悲深い永遠の安らぎは、この身にやってはきませなんだ。ただ絶え間ない苦痛と肉体の衰えとが、あるばかりなのです。
 しかしながら、わたしの懊悩と苦悶の日々も、こうして報われる時が来たのです。あなた様という聖なるみどりごが、ふたたびよみがえってくれたのですからな。ところで、アトランティス人たちの中には、宇宙に脱出した者もいたらしいのです」
 バハールはふいに言葉を途切らせた。



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