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作品名:小さな口癖 作者:月の羊飼い

第5回   5
泣かなかった。それだけで今日の私は少し強かった。


普段鳴らない携帯が鳴った。それも昔の彼氏からの電話。

面白くない話を無理して話してどっと疲れた私。


無理矢理面白い事を探したくてちょっと遠くまで出掛けた。

私は大して興味も無い景色に無理矢理感動して、夢中でシャッターを切った。


「そこそこいい写真が撮れてるだろう。」


そう思って確認した写真にははっきり私の親指がどアップで写ってた。

あーあ。


帰り道はスキップして大声で歌おうかと思った。

意味も無くコンビニで抹茶アイスを買おうとも思った。


スーパーの前で待たされてる繋がれた犬を見て私はニッコリした。

何かに優しくすれば私もきっと優しくされるだろうと思ったから。


その日の夕日はすごく綺麗だった。

いや、綺麗なのは夕日の近くの横長な雲だったかな?忘れちゃった。


家に着くとお母さんがお風呂を沸かしといてくれた。

私は何も言わずに脱いで、たくさんの事を考えながらため息をこぼした。


お湯の温度は覚えてない。タオルの色も覚えてない。

シャンプーのメーカーもリンスの香りも何にも何にも覚えてない。


覚えてるのは歌った歌の歌詞を途中で忘れた事。

あとは歌いだしがいきなりサビだったかな。しかも2回目の。


私は泣かない為にシャワーをずっと顔に当ててた。



代わりに流れたたくさんの水に感謝、感謝。


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