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作品名:小さな口癖 作者:月の羊飼い

第2回   2
聴きたくないなって思う音がある。何かを思い出す香りがある。

なんでだろう?電車に乗って眠ってたら隣の席の人が変わってた。

隣の老人は不思議な香りがする。なんだか解んないけど落ち着く。


今日はなんだか頑張った。そう思う日だった。自分で自分を褒めるのは久しぶり。


そんな日でも夜は私を悩ませる。日に日に増えてく目の下のくま。

夜は私を起こしたまま朝まで連れてく。


父親のDVに悩んでた頃が懐かしい。父親が寝るまでは寝るもんかってお母さん守るために
私は意地でも起きてたっけ。お母さんはいつも私が守っていた。自己犠牲で痛いの半分こ。


気に入ってたクリスマスプレゼントのオルゴールを気に入って何度も聴いてた。

しつこいくらい何度も何度も聴いた。


いつか壊されたっけ。暴れた父は粉々に壊しちゃったんだ。


私はピアノも習ってた。お母さんが私に何を目指させたかったのかはよく解らないけど、
私は一時的なお母さんの期待に本気で答えようと一生懸命同じ曲を練習した。


あの夏の夜は外まで響いてただろう。曲名は「舞踏の時間に」



たくさん生きてきた中で別に感動した訳でもないのに残る記憶。きっと意味があって残された。

たくさんの景色や音、香りの中で残されてるものは全部いつか役立つ何かの鍵。



忘れちゃいけないんだ。でもね、頑張らなくても忘れないから大丈夫。

生きるだけで人はいくつもの鍵を手にして、その鍵で開く穴には何度も出会うんだ。



開けた先には何があると思う?中には悲しいものもある。

でもそれは悲しいだけ。不幸にはならないよ。





安心したくても恐がりながら生きる今に、解っているのに信じれない孤独。


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