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作品名:竜の鱗 第2章 作者:葵 輔

第7回   六部咲き
少林寺拳法には「後ろ受身」があって、後ろに突き飛ばされても、クルリと一回転して立ち上がる訓練をするのです。

ゴリラ君、攻撃の練習ばかりでこういう地道なことをやってこなかったようです。

しばらく両腕で頭を抱え込んでいました。

そして、怒りと気恥ずかしさからでしょう、真っ赤な顔をこちらに向け、飛び上がるように立ち上がると突進してきました。

空手に比べ、スピードはあるものの、梶尾のような豪腕といった力強さはありません。

小林君との毎度の組手で彼の脅威のスピードに体が慣れてきていたため、ゴリラ君の攻撃総てを楽々受けきりました。

打つ手が無いという失望感と焦燥感からか、赤い顔がだんだん青くなってきました。

彼が波状攻撃の疲れで一息つくのに立ち止まった瞬間、右下段回し蹴りを叩き込みました。

少林寺拳法では、ローキックを使う者が当時ほとんどおらず、私の専売特許のようになっていました。

ゴリラ君は、一撃で棒立ちになり、二撃目も避けることができず、苦痛に顔を歪(ゆが)めました。

三発目のローキックを放ちました。

彼はそれを避けようと少し前屈みになりました。

蹴りの軌道は途中から上段に跳ね上がり、顔面をしたたか打ち据えました。

得意の二段蹴りです。

ゴリラ君は、夢遊病者が彷徨(さまよ)うように二、三歩ふらふらし、ゆっくり崩れ落ちました。

仲間は彼を壁際に運び出すと、お互いアイコンタクトを送りながら誰も立ち上がろうとしません。

自分のところの道院長が軽く捻(ひね)られたのです。

長谷部の怒声を受けてNO.2と見られる男が立ち上がりました。

覇気が感じられません。

気持ちの籠(こも)らない突きを出してきました。

私は、足の裏でストッピングの前蹴りを胸に飛ばしました。

男は二、三歩後ろに後退し、意を決したように気合を入れ、左中段に回し蹴りを放ってきました。

左腕を下向きに、右腕を上向けて二本の腕を交差させる「十字受け」で蹴りを受けとめました。

受けるときに、腕の交差点を軸に、鋏(はさみ)で脛(すね)を切り取るように、腕の間をすぼめます。

これで受けられると、蹴った方に激痛が奔ります。

彼は、うずくまったまま、戦意を喪失しました。


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