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作品名:竜の鱗 第2章 作者:葵 輔

第6回   四部咲き
少林寺拳法の突き蹴り攻撃、剛法の特徴は、突き蹴りと戻し(引き)の早いこと。

現に、小林君の攻撃は、一回、息を吸う1〜2秒の間に数発の手足が飛んできます。

多分、見えないと思います。

拳は縦拳で、空手のように捻(ひね)りません。

拳を打ち出すときは、空手だと体の正中線を崩さず突き出しますが、少林寺拳法は正中線を外して打ちます。

相手のカウンターを受けない工夫です。

関節技、投げ技の柔法は、主に腕や衣服を掴まれた時のものです。

名人になると、相手の突きを空中で掴みそのまま投げ飛ばす人がいます。

自由組手では大抵、剛法のやり取りになります。

さすがの長谷部も、小林君ほどのスピードはありません。

ただ、実戦慣れ、打(あて)感は凄いものがあります。

相手のゴリラ男、体格からして小林君を凌駕するスピードの持ち主とは思えません。

長谷部ほどの格闘センスも無い筈です。

誘いもかねて相手の制空圏に入ってみると、前蹴りが来ました。

お腹を少し窪ませ空間を作ると、両手を相手の蹴り足に上から重ねるように添え、腰を少し落とすと苦も無く蹴りを止める事ができました。

次は、中、上への二連の突きが来ました。

中段の突きには肘から手首に掛けての腕の表側を相手の腕の側面にやはり添えるように当て、外側に軌道を逸らします。

上段の突きは、相手の腕の外側を擦(こす)るように自分の腕を下から上に滑らせると、私の顔面すれすれを通り過ぎます。

ゴリラは明らかに、違和感を感じています。

かつて、こんな相手に出くわしたことが無い。

受けも体裁きも見たことが無いのです。

暫く私の周りをゆっくり廻っていました。

「どうした!!」

長谷部の叱咤に、意を決し再び飛び込んで来ようとした時、出足と拳を私に抑えられていました。

私には相手のタイミングがミエミエでした。

相手より早く懐に飛び込み、両手で相手の両拳を押さえてしまったのです。

驚いたように後ろに下がるゴリラ。

スッと着いていって、下がる勢いを利用して両腕で相手を持ち上げるように突き飛ばしました。

「ドーン」

ゴリラは尻から床に落ち、その後一回転し頭を打ちつけました。


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