練習開始まで暫く時間があったので古参(こさん)の法田(ほうだ)さんに彼らのことを聞きました。
彼らは、実戦の腕前から長谷部を信奉している、隣町の道院長とその幹部でした。
「崇拝に近い」
法田さんは、彼らが長谷部の忠実な僕(しもべ)であり兵隊だと語りました。
「『強さ』命(いのち)の扱いにくい奴等だよ」
〈 これだけの人数を呼んだんだ、どこかで仕掛けてくるに違いない 〉
私は練習中、一瞬たりとも気を抜けませんでした。
休憩を挟み後半の部に入ると、長谷部が皆に話し始めました。
「組手もいつも同じ相手だと進歩がないから、○○道院からわざわざ来てもらった。しっかり教えて貰え」
「マンツーマンでやる、やらないものは壁まで下がれ。佐野から」
佐野君は高校3年の茶帯で気の小さなヒョウキン者でなぜか私に慕ってくれていました。
組手が始まると、佐野君はへっぴり腰で逃げ回り、長谷部に六尺棒(ろくしゃくぼう)で背中をどつかれ、破れかぶれで向かって行きました。
前蹴(まえげ)りを水月(すいげつ)に喰らい悶絶(もんぜつ)して壁際に運び出されました。
手加減しないというデモンストレーション!
佐野君の相手をした他道院の親分は、私に目を向けると、手招きしました。
〈 キタか! 〉
〈 顔面も、金的も有りと思ったほうがいいだろう。〉
梶尾の時の様なストリートファイトを想定して、心の中で気合を入れ立ち上がりました。
「はじめ!」と長谷部。
一礼をし、互いに合掌(がっしょう)構えから逆下段(ぎゃくげだん)構えで向かい合いました。
私は、構えは少林寺拳法のものでしたが、頭の中は完全に中国拳法に置き換えていました。
梶尾のときと決定的に違うのは、攻撃の仕方を手に入れたことです。
特に、蹴りは学生時代にキックボクサーに憧れ猛特訓したのが功を奏し、私の最大の武器でした。
相手は頭髪を角刈りをしたマウントゴリラのような容姿で、闘気(とうき)の圧力は凄いものがありました。
しかし、長谷部を信奉しているということは、長谷部以上ではない。
そう踏んで、私は特段緊張することなく、様子を伺うのに取り敢えず受けに廻ることにしました。
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