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作品名:竜の鱗 第2章 作者:葵 輔

第3回   トラブルの萌芽(ほうが)
「道院長と互角に戦(や)れる人は葵さんだけだ」という声が練習生の間で公然と上がり始め、ある日、道院長の長谷部から組手の相手に指名されました。

なぜかご指名はこれが始めて。不思議だなあとは思っていたのですが・・・

ここの自由組手のルールは、顔面への打撃と急所攻撃が禁止。

私たちの組手が始まると、他の練習生たちは一斉に組手を止め、私たち二人を取り囲む様にしゃがんで見学を始めました。

私はまだ特段の悪意を彼に持っていたわけではないので、道院長の面子(めんつ)を潰さない様、細心の注意を払い攻撃をしていました。

しかし、彼の攻撃は遠慮容赦のない熾烈(しれつ)なもので、自慢するだけあって彼の強烈な攻撃を捌くだけでも大変な神経を使いました。

と、顎にガンと衝撃を受け瞬間クラっとしました。

拳を受けたのです。

顔面なしのルールに、よもやと気を抜いていたため、避けることができませんでした。

「あっ」と周りから声が上がりました。

「いや、スマン、スマン、ついうっかり」

笑顔で声を掛けてきましたが、目は笑ってはいません。

それでも私はじっと我慢をし、相手に攻撃が当たる時は、瞬間、力を抜き怪我をさせないよう戦い続けました。

「ヤメ!」

小林君の終了時間を告げる掛け声でこの時はそれ以上のこともなく、互いに一礼をして分かれました。

「やっぱ葵さんはスゲー、長谷部さんと互角だモンなー」

「道院長とタメでヤレる人、始めて見た」

学生達から無遠慮な歓声が飛び交います。

タチが悪い人物だけに、恐ろしくて道院長のほうを見ることができませんでした。

「顔、大丈夫ですか?」

覗き込むように美奈子が声を掛けてきました。

山本美奈子(やまもとみなこ)は教員で、長谷部の誘いで友人と共に新しく道院に来る事になった活発で個性的な女性です。

もう一人は美奈子の友人で、やはり教職の四方明子(よもあきこ)。

幼顔の癒し系の美女でありながら、顔から想像できないほどの豊満な胸をした控えめな女性。

「あれ、絶対ワザとですよね」

美奈子は声を潜(ひそ)めて長谷部を非難しました。

練習を終えると美奈子は私と並んで歩き、あれやこれやと質問攻めにしてきました。

その後、彼女からのモーレツなアタックで二人はすっかり仲良くなりました。

しかし、時と共に、彼女の自由奔放(じゆうほんぽう)な行動についていけなくなってきていました。

と同時に、大和撫子(やまとなでしこ)を感じさせる明子に次第に心奪われるようになっていました。

美奈子が私たちのことを平然と道院内で話すため、二人のことが長谷部の耳に入ることとなりました。

美奈子に目をつけていた長谷部にとっては、このことが決定的なことになったらしく、以後、私に大変な出来事が起こり始めるのです。


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