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作品名:竜の鱗 作者:葵 輔

第6回   あんた何者?
バスは社員旅行最大イベントの観光施設に到着しました。

ここは、細い道の両脇にびっしり地域名産品の売店が立ち並び、道路の一番奥には展示場や体験施設がかなりの規模で作られていました。

町の一角がまるまる観光エリアになっており、たっぷりと時間をとって自由行動できます。

私はバスの中でずっと考えていたことを広田さんに直接聞いてみようと、室長を探し始めました。

どこを探しても姿が見当たらず、痛む体を引きずりながら入り口から展示場までの道を何往復もしました。

途中、中島と出会い、今までの経緯を話し広田さんを一緒に探してくれるよう頼みました。

二人は疲れ果て、一休みしようと入り口近くの喫茶店に入ると、そこで広田さんが一人で珈琲を飲んでいました。

彼は私たちを見つけると例の笑顔で手招きしてくれました。

広田さんの前に私たちは座り、早速疑問をぶつけてみました。

「あの晩、トイレに来た人が、広田さんが梶尾を一発KOして、私をひょいと担いで部屋に戻っていくのを見たという人がいます。あの梶尾をKOしちゃうなんて素人のできることではありません。また私たちが格闘技ごっこをしている姿を興味をもって見ていたのも気になります」

私は話をはぐらかされないよう、聞いてもいない嘘を交え話しました。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

かなりの時間、視線を宙に向けていた広田さんは、観念したように
「見られてたか〜。・・・但し君を軽々担いでというのは間違いだな。葵君は相当鍛えてあって下半身の発達振りには驚いたよ。」と語り始めました。

広田さんは珈琲をお代わりをして、新しいのが来ると、一口美味そうにすすると椅子にゆったり体を沈め再び話し始めました。

「しょうがない。僕のことをお話しますか。でも会社の人には内緒だよ。」

少し間があって、
「実は、僕は空手発祥地の沖縄出身なんだ。そこで琉球(沖縄)空手を3歳の時から叩き込まれたんだよ。親父も空手家だったからね。」

私たちはビックリすると共に、この意外な話を身を乗り出して聞きいっていました。

「多分君らの想像を絶するような修練をしてきたよ。例えば貫手(ぬきて)。大豆の入った壺に手をザクザク突っ込み手を鍛える。やがて豆から砂、小石とグレードアップし、数年後に一応その鍛錬は終了する。次に、死んだ牛を貰ってきて、素手の貫手を牛の体に突き刺し、内臓を引っ張り出すという訓練をするんだよ。」

手を牛に突っ込む仕草をしながら、いつもの広田さんとは思えないような真剣な眼差しで熱っぽく語り続けました。


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