痛みのせいで、どうせ朝食は食べられないだろうと思って、翌日はチェックアウトの時間ぎりぎりまで寝ていることにしました。
時間が来たので、1階のロビーに足を引きずり胸を押さえヨタヨタと降りていきました。
格オタ(格闘技オタク)連中がソファーを独占していました。
中島が目ざとく私を見つけ、走りよって肩を貸して、ソファーに座らせてくれました。
「アオイー、どうしちゃったのー」
「夕べ、梶尾に・・・」
「え〜、お前だったのか!!」
江藤がスッ頓狂な声を張り上げました。
「お前って・・何?」
「昨日の夜遅くにさ、専務の部屋から怒鳴り声が聞こえ来てさ、恐る恐る隙間から覗いたさ。そしたら専務の前に梶尾が正座させられてて、周りを腕組みした部長や課長が5,6人取り囲んでいたわけよ。」
一同の顔をぐるっと見渡して江藤は続けた。
「梶尾がうちの社員に暴力を加え大怪我させたらしんだ。どー言うつもりだー、クビにするぞーって、スッごい剣幕で専務が怒鳴っててよ。ガイドを脅したりバス蹴っ飛ばしたり他にも散々悪さしたらしいんだな。」
「へー、それで?」
「梶尾のヤツ、散々お灸絞られて部屋に返されたんだけど、部屋に戻ってからも、畜生、チクショーて唸ってるんだよ。」
「あんなやつクビになりゃいいんだよな」
「ところがさ、違うんだよね。専務のことじゃなくて誰かにやられちまったらしんだよ。」
「どういう事ー?」
「あいつと同じ支社のヤツに愚痴を言ってたんだけど、誰かをヤってる時に別のやつに嘗底(しょうてい)を顎(あご)に受けて一発で失神させられたらしいんだ。」
「うっそー、梶尾を一発う?」
「ホントだって、ゼッテー探し出して殺してやるっていきまいてたぜ」
「ところで葵、何でお前、梶尾にやられた?」
「さー・・・??裏庭のベンチで休んでたらいきなり・・」
「フーン、でも気をつけろよ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いじゃないけど、またお前狙われるぜ」
「堪忍してよー、俺、関係ねージャン」
「あいつにそんなの通用しないよ」
「ヤダー」
集合の時間になり、仲間の手を借りバスに乗り込みました。
バスの中で、江藤の言葉を反芻(はんすう)しながら考えていました。
梶尾を一撃でのしたヤツがいる・・。 誰・・? 夕べあの場にいたのは私と梶尾だけ。 後から広田さんが駆けつけてくれたらしいけど、まさか広田さんが??? しかしどう考えても当事者を除けば広田さん以外、居なかった。 でもあの広田さんが???
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