トイレ休憩のサービスエリアで友人たちと格闘技ごっこをしていたとき、なんとなく視線を感じ振り返りました。
少し離れたところに停車しているバスに片手をつき、こちらをじっと見つめている男と目が合いました。 その男は視線を外すことなくこちらを睨みつける様に見ています。
「おい、あいつ誰?」
「ン、 ああ、あいつは白子(しろこ)支店の梶尾(かじお)ってやつだ」
「そうそう。けどあいつ評判悪いんだってよ」
「なんで?」
「あいつサー、俺らより2,3、年、上なんだけどここに入ったの新しいんだ。なのにすっげー横柄なんだってさ。なんか空手2段なんだって。腕っ節を自慢してさ、気に入らないとすぐ逆切れするから手に負えないって言ってたぜ。」
「ふーん」
「あ、そうそう、なあ葵」
中島が私の首に腕を回しながら 「俺、少林寺の道場に通うつもりなんだ。一緒に行こーよ」
「少林寺拳法か〜」
また格闘技話に熱中し始めた私は梶尾のことをすっかり忘れてしまったんです。
その後何度かのトイレ休憩を経て、かなり大きな宿の駐車場にバスは止まりました。
正面はホテル風だが、中に入ると渡り廊下があったり露天風呂があったり、どちらかというと旅館っぽい。 裏庭には芝生がびっしりきれいに張られていたり小粋なベンチがあったりちょっとした公園風。
夜、月の薄明かりの中あのベンチにもたれ可愛い彼女と語り合えたらいいのになあ、って会社のマドンナに恋しているのに遠くから眺めているだけの私です。
そんなこんなで、宿の中を散策しているうちに、待望の宴会の時間となりました。
大広間で、マドンナの姿を目で探しながら豪華な食事に舌鼓を打ち、注がれるままビールを飲み、幸せな時間が流れていきました。
たらふく食べ、たらふく飲んで、トイレに行きたくなりました。
ふらふらと立ち上がりトイレで鼻歌を謳いながら用を足し、ふと外を眺めると昼間確認したあの公園のような裏庭があるではないですか。
お酒で火照った体を夜風にあてようと、「一人じゃ詰まんないー」と鼻歌交じりで裏庭に出て行きました。
ベンチで見事な三日月を眺めながら「アア、幸せだな〜」と声に出しながらだらしなくベンチに横たわっていました。
後ろから音も無く忍び寄る悪魔に気づかずに・・・・・
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