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作品名:竜の鱗 作者:葵 輔

第14回   暗雲の正体
水曜日が来て、練習を始める前に、広田さんに会社を辞めていたことを確認しました。

「イヤー悪い悪い。まだ詳細が決まっていなくて言い出すきっかけがなかったんだ。大阪にいる友人から、友人が経営する会社のコンピューター環境を構築して役員になってほしいと頼まれてね」

私の様子を確認しながら
「なかなか決心がつかなかった。家族のこともあるし、特に君のことが・・・」

「でも、今でも週末は大阪方面の右翼団体の武術教官として毎週出かけてるし、今の会社の仕事は僕なしでも回るようになったし、分厚いマニュアル書も書き上げたし、まあ友人を手伝ってもいいかな〜なんて思って」

「君は、基本が十分身に付いているから後は化勁だけひと通り教えれば、十分一人でやっていけるから」

「とんでもないです。それに・・実は梶尾が・・」

私は先日、川原さんから聞いた梶尾の話を伝えました。

「そうだったのか。迷惑かけちゃうね。しかし、大丈夫、君は今は基礎訓練を学ぶ身だが十分な武術の才能がある。いわば地にもぐった伏竜(ふくりゅう)だ。十分な練習を積み上げればやがて天に昇る昇竜となる。僕の言葉を信じて! 君は竜になれる才能がある」

私はもう何も言えませんでした。

明日にでも梶尾に出会うかもしれない。そう思い、化勁の訓練を必死に始めました。


日曜日に私は中島と釣りに行く約束をしていて、土曜日の午後、釣り場を決めるため下見に車を走らせていました。

後ろから猛スピードで近づいてくる黄色い車がありました。

そのうち私のルームミラーではその車のナンバープレートが見えないくらい、ぴったり後ろに張り付いて右に左に煽り始めました。

私は道を譲ろうと、軽くブレーキをストッピングをして窓から手を出して手を振りました。

何を勘違いしたのか、パーンとクラクションを鳴らすと歩道に車体を乗り上げあっという間に私の車の前に出て急ブレーキをかけました。

何とか衝突は免れましたが、その黄色いシャコタン車(車高を異常に低くした暴走族御用達の車)から黒のTシャツにジーパン、ズックの筋骨隆々とした男が降りてきました。

いきなり私の車を蹴飛ばしそうな勢いだったので、やむなく私も車から降りその男と向かい合いました。

と、その瞬間つま先が私の顔面めがけて飛んできました。

間一髪、体を振り顔をそむけました。

ボシュッ、

私の顔があった空間に破裂音のような音が鳴り響き、次の瞬間後ろ回し蹴りが襲ってきました。

私は開脚して体を沈め、蹴りをやり過ごすと後ろに体を倒しくるりと回転して、男と距離を摂って立ち上がりました。

男はびっくりしたように目を見開き、
「俺の攻撃をこうも見事に防ぐとは、・・・。おまえ何かやってるな」

男は吠えた。

「俺は寛山流の山内だ。松崎町の道場で俺と戦え」

寛山流は、有名なプロレスラーと、その粗暴さと実践での強さで狂犬の異名をとる空手家が立ち上げた新興空手団体です。

また空手野郎かー、ホント空手に縁があるな。私はウンザリしました。


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