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作品名:居場所ーpremium loveー 作者:yossy

第5回   誕生日の意外な贈り物
会社で使っている旅行会社の50代の担当者に電話した。「個人的に旅行をしたいんですけど。」「解りました。お任せください。」会社に来てもらって、「仕事外で二人で旅行したいんですけど。」「奥様ですか?」「いいや、僕は独身なんで、違うんだけど、女性と2人なんだけど。」にやにやしながら「丸秘ですね。」いやな感じがした。「二人のことが丸秘じゃなく、会社の忙しい時期にプライベートな旅行をすることが、みんなに、あんまり知られたくないんだ。」口に指をあてて「内緒。内緒ですね。」なんかもっといやな感じ。「女性の方の名前と年齢、指し使いなければ、教えていただけますか?必要なんです。」「かつら27歳。」さらににやっと微笑んで、大きく首を縦に振りながら「丸秘!丸秘ですね。解りました。ご希望はわかりましたので、お任せください。ただ、1月前になると解約出来なくなって、解約する場合、一部負担願いますが、よろしいでしょうか?」旅行の期間は観光シーズンなので、直前では、なかなか、取れないし、高いらしい。少し考えたが、「お願いします。任せます。」と話を進めた。「私は誰にも言いません。丸秘で進めます。」余計だ。ほんとに、嫌な感じだが仕方ない。
 僕と彼女は、ほとんど売り言葉に買い言葉のたわいもない痴話げんかなんだが、よく喧嘩をした。二人とも、O型のせいか、切れるといいたいことを言い合うので、喧嘩になる。特に彼女は、謝るまで、機嫌が悪い。旅行を決めてしまった事で、そこまで、なんとか仲良くしていなければならない。むしろ、その事が、何度かの喧嘩を乗り越えた。「どんなに嫌になっても、旅行だけは一緒に行ってよ!」「言われなくたって、行くって言ったんだから行くよ!」喧嘩の最後はいつもこれだった。なにしろ、解約時に支払うお金が26万だった。
 僕の誕生日がやってきた。彼女は、カルティエのキーケースとアルマーニのネクタイを2本買ってきた。それ自身好きなものだったので、すごくうれしかったのだが、他にもプレゼントがあると言った。もしかして、これが一番欲しいものだとも言った。彼女は、何回も、「絶対信じられないと思うけど。」と言って、2個の鍵を出した。一本は古い鍵。もう一本は新しい鍵だった。「今日、プレゼントしようと思って、部屋の鍵を作りに行ったんだけど、部屋に戻ったら、玄関に、一本、鍵があったの。」「元彼か?」「ん。そう。びっくりした!」鍵を返すようにと何回か言っていたと言う。「どっちがいい?」すぐに、新しいのを指さして、「こっち。」「そうだよね。当たり前だよね。いいよね、いらないよねそんな話。」僕は、殆ど黙っていたが、彼女は、すっきり出来て本当によかったっていう気持ちが表情にあふれていた。
 この日から、二人は真っ直ぐ前を見るようになった。旅行まで後10日足らずとなった。7月になったばかりなのに、暑い日が続いた。僕のうちには扇風機しかない。かといって、クーラーを付けるには夏が短すぎる。そこで、冷風機なるものを買ってきた。6900円の特価だった。保冷剤の入った容器を冷凍庫で冷やし、それを中の水に入れて、風を送る簡単なものだった。「全然涼しくないね。」「失敗?」二人で顔を見合わせて、笑った。言い出したのは僕だったが、彼女は、責めたりしない。失敗したり、予定が変更になったりしても、彼女は、文句を言ったりしないのだ。むしろ、その変化を笑って楽しんでいる様だった。その性格が、旅行を楽しいものとしたのだった。
旅行の日は、朝の早い飛行機だったので、郊外の僕のうちから出掛けるのでは間に合わないので、旅行の前の日は彼女のところに泊まることになっていた。7月に入って、予行練習と称して(口実に)、彼女のうちに泊まる事も多かったんで、役立たずの冷風機ではあったが、彼女の家に運んだ。泊まる日は、保冷剤だけでは冷えないので、氷をコンビニでいっぱい買って、彼女の部屋へ持っていった。多少は涼しかったが、消費量が激しくて、30分で、1袋なくなった。恐らく、この夏だけで、1万円以上になったと思う。結局、冷風機は、その秋、引越しするときに、あっさり、捨てた。
あんまり暑いんで、2日ほど、ホテルに泊まった。冷房がすごく効いている。考えてみたら、ホテルは初めてだった。新鮮さに、一回目は、お風呂で遊んだりしたが、二回目は、昼のうちに暑さにやられていたので、久しぶりに、ぐっすり寝た。


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