タカが結婚をしたのは21歳の時だった。ユリと同じくデキ婚である。
タカには息子と娘がいて、29歳の時に離婚し、帰宅時間が遅いこともあり、実家で両親の手を借りながら育てている。 父の日にはプレゼントをくれる、心優しい子供達だ。 『ネクタイとパジャマをもらった。』と喜んでいたこともあった。 母親がいない寂しさを決して口に出したりはしないでいるようだ。
タカは離婚の理由を話したがらない。 『意地もあって別れた。』と言っていた。 『結婚当初は子供の面倒もよくみたけど、だんだん仕事が忙しくなっちゃって…』とも。
一度だけ 「愛ってなんですか?」 と寂しそうに言ったことがあった。 ユリは答えられなかった。 ユリにも愛とはどんなものなのか、よくわからなかったのだ。
タカには、どんな過去があるのだろう。 ユリは気になった。だが聞くことはできなかった。 聞いてはいけないんだと感じた。 きっと深い悲しみを経験したに違いない。 そう思うことにした。
|
|