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作品名:繋がる空 作者:

第11回   タカを残して

ユリは
「眠ったら帰るから…寝ていいよ。」とタカに声を掛けた。
明日の研修に響いては困る。

「帰っちゃうの?」と聞くタカ。

「うん」と答えるユリ。
子供が起きる前に帰らなければ。

タカの隣に寄り添って、タカが眠りに就くのを見ていた。
静かに寝息をたて始めたタカ。

『もう帰らなきゃ。』

ユリはホテルのメモ用紙に伝言を残した。
『逢いたいって言ってくれてありがとう。』

眠るタカの髪を撫で横顔にキスをする。
涙が溢れてくる。

『帰りたくない。帰りたくなんかないよ。このまま、ずっと一緒にいたい。』

静かにホテルの部屋のドアを閉め、ユリは泣きながらタカに逢いに走ってきた道を戻って行く。

街はまだ眠っていた。

六時半メールを送る。
『おはよう。起きた?』

『おはよう。今起きたよ。』

その日はタカのことでいっぱいだった。ずっと考えていた。
夕方タカからメールが届いた。

『研修が終わったので帰ります。昨夜のことは夢だったのかな。』と。

それから間もなく、タカから会社を辞めたとメールが届いた。
前々から会社の方針に着いていけないと悩んでいたのだ。


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