ユリは 「眠ったら帰るから…寝ていいよ。」とタカに声を掛けた。 明日の研修に響いては困る。
「帰っちゃうの?」と聞くタカ。
「うん」と答えるユリ。 子供が起きる前に帰らなければ。
タカの隣に寄り添って、タカが眠りに就くのを見ていた。 静かに寝息をたて始めたタカ。
『もう帰らなきゃ。』
ユリはホテルのメモ用紙に伝言を残した。 『逢いたいって言ってくれてありがとう。』
眠るタカの髪を撫で横顔にキスをする。 涙が溢れてくる。
『帰りたくない。帰りたくなんかないよ。このまま、ずっと一緒にいたい。』
静かにホテルの部屋のドアを閉め、ユリは泣きながらタカに逢いに走ってきた道を戻って行く。
街はまだ眠っていた。
六時半メールを送る。 『おはよう。起きた?』
『おはよう。今起きたよ。』
その日はタカのことでいっぱいだった。ずっと考えていた。 夕方タカからメールが届いた。
『研修が終わったので帰ります。昨夜のことは夢だったのかな。』と。
それから間もなく、タカから会社を辞めたとメールが届いた。 前々から会社の方針に着いていけないと悩んでいたのだ。
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