「本日より王都騎士団配属となりました、アカデミー出身、ラン・エルロイです。よろしくおねがいします。」 「同じくアウルス・イシュトヴァーンです。よろしくおねがいします。」 「同じく、アルベルト・シュバイツです。よろしくおねがいします。」 入団式の翌日王都騎士団の宿舎に入った三人は、騎士団員の前で入団の挨拶を行った。今回、三人の他に入団したものは四人。 「ウィニア騎士団出身、アンドレ・ロックです。よろしくお願いします。」 「ティレドー家の紹介で入団しました、ノリス・マグアイアです。よろしくおねがいします。」 「シュトリア自治区私設騎士団出身の、ヤン・ケムルです。よろしくおねがいします。」 「南方騎士団より王都騎士団への配属が許された、シュバインシュタイガー・ラルドルフです。よろしくおねがいします。」 それぞれの紹介が終ったところで、団長であるティレドーが前にでた。 「今期はアカデミーが三名もの合格者を出したという事と、南方騎士団からの帰りがいることで、極めてバランスよく、かつ能力の高い新人が入団する年となった。また、アカデミー長より今期の合格者は近年まれにみる粒ぞろいと聞いている。私はもちろんながら、国王陛下も期待されておられた。陛下の期待にこたえる健闘を祈る。例年、新入りは既存の小隊に一人ずつ配属していたのだが、近年、治安の悪化が激しく、毎日のように小隊が入れ替わりに出陣している。それにともない、今期始めに小隊を編成し直したのは諸君も知っての通りだ。小隊の規模を小さくし、迅速な行動が叶うよう、普段から気の合うもの同士を6人一組とし1小隊。5小隊30人で1中隊。以前の大隊を廃し、全5中隊の上に直接私が入り、中隊レベル以上の出陣はなるべく私が隊長となり出陣するようにした。今期の新人がかように能力が高いのは騎士団にとっても大きな救い。例外ではあるが、今期の新人はこの7人で1小隊とする。この小隊の小隊長を副団長のランベリーに頼んだ。ただし、ランベリーは事務職嫌いの俺に代わり、本来団長がやるべき任務をほぼ一人でこなしてくれている。その為、非常に忙しい。普段の訓練から彼がついて指導することは不可能だ。出陣の場合も、急を要する際には独断で動いて欲しい。その為に副小隊長として…シュバー、お前が副小隊長をやってくれ。復団早々で、慣れぬ事もあると思うが、その為にランベリーをつけてあるようなものだ。普段はお前が指揮をとり、難しい場合にはランベリーを頼ってくれ。」 ここまで一気に話してきたティレドーだがここで一息ついた。 「以上!新入りについてだ!異議、質疑、あるものはいるか?」 ティレドーは辺りを見渡したが、挙手するものは見当たらなかったようだ。 「よぉし!それでは本日の朝礼はこれにて終了だ。尚、今日は3、15、17、21番小隊に任務を言い渡す。隊長は後程執務室へ来るように。あと、新入りも全員執務室へ来い!ランベリーを紹介すると同時に簡単な初任務を言い渡す。各隊、見張りを忘れないように!以上!解散!」 王都騎士団には主に三つの施設がある。一つは宿舎。騎士団員が生活を送るための施設である。宿舎には個室の他、食堂、浴場、ロビーといった公共のスペースがある。建物自体は新しくはないが、国の首都を守る騎士達が不自由の無いような設備は、整っている。ここに入るものは騎士団の中でも爵位を持たない者だけで、爵位を持っている者は王都内に邸宅を持っている場合が多く、宿舎に入るものは少ない。 二つ目の施設が訓練場である。ここは、出陣していない騎士が自由に訓練を積める場所で、普段の主な活動場所はここになる。屋内、屋外双方の訓練が積める他、シミュレーターもあるため小隊同士で、戦のシミュレーションをすることもできる。 三つ目が本営である。騎士団の事務を執り行う施設である。執務室もここにあり、普段は副団長のランベリーが、ここで騎士団の事務を行っている。王都騎士団は首都近郊に住む全ての国民から、広く情報を募集しており、一日に何件もの依頼が届く。その種類は多岐にわたり、モンスターの発生や盗賊の被害など日常的なものから、他国の軍隊の発見や、反乱の可能性を示唆するものといった国家安定を揺るがすようなものまである。それらを捌き各小隊の特徴に合わせ、最適な隊を任務に当てる。これが主な事務である。隊長のティレドーは共和会議の議員も兼任するため、事務をこなすのに支障が生じる事も多くなる。故に、こうした事務はランベリーに一任されているのだ。屋上には8方位を見渡すことができる、8つの双眼鏡が取りつけられており、見張りもここで行う。騎士団の見張りは担当制で、一日を0〜6、6〜12、12〜18、18〜24と4分割し、交代で1小隊ずつが見張りにつく。一日に4小隊が見張りを行い、小隊は全部で25隊であるから、6日に一度は見張りに就くことになる。小隊の任務は依頼の解決と見張りからなる。いずれの任務も言い渡されない日は休日である。訓練するもよし、気晴らしに出かけるもよし。休日についての自由は騎士団規則によって確約されている。
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