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作品名:Ristorante Delizioso《リストランテ デリッツィオーソ》 作者:you

第13回   Infiltrato〜真夜中の侵入者
一っ風呂浴びてさっぱりした私は、幸せな足取りで自分の部屋に戻って来た。
ロフトに作った簡易物干しにタオルを掛けてベッドに横になる。

「…でもまだちょっと熱いかな」

私はもう一度起き上がると、窓際へ向かい窓を少し開ける。
淡いベールを纏った月が、流れる雲で見え隠れしていた。

サワッ、と外から冷気が流れ込む。

いくら4月に入って桜が咲く季節になったといっても、夜風はまだまだ冷たい。
でも湯上りの火照った体には丁度良い冷たさだった。


「さぁ これで心おきなく眠れる」

枕元の時計に目をやると、もう時刻は1:30を回ろうとしていた。

「うわ、もうこんな時間なんだ。早く寝なきゃ」

私は布団を胸まで掛けて、両腕を出すと静かに瞳を閉じた。

◇◇◇◇

「だめだっ!」

私は再び布団を剥ぐ。

風呂上りの火照った体は落ち着いたものの、今度は違う熱さと喉の渇きが私に押し寄せる。

そう、お酒を飲み過ぎた後に襲ってくるあの渇きだ。

「喉が渇いた〜っ」

しかし私は無理やりもう一度目を閉じる。

(又下まで行くのは面倒くさいな…)

プライベートな部屋がある2階には、水飲み場がない。
あるとしても、トイレの水道だけだ。
うら若き乙女には、いや乙女じゃなくてもちょっと御免被りたい。

「我慢、我慢。無理やり寝ちゃえば大丈夫だって」

私は寝返りをうつと、目を閉じて確実に安眠を促すであろうポピュラーな呪文を唱えた。

「羊が1匹…羊が2匹…羊が3匹…羊が4匹………」

まだ睡魔は襲ってこない。

「……羊が85匹…羊が86匹…羊が89匹…ん、いや86だから87匹か……って、無理っ!」

目を開ける。

「誰よ、絶対眠れるなんて言った人っ、眠れるどころか何匹まで数えたっけ?なんて益々頭が冴えて眠れないよ。それとも声出してるからいけないのかな?」

今度は頭から布団をすっぽり被って、心の中で呪文を唱え始めた。

(羊が1匹…羊が2匹…羊が3匹…)

◇◇◇◇

暫く呪文を唱えていたが、頭がぼ〜っとしてきて次第に数が数えられなくなってきた。

(羊が…7…5匹…羊が…7…6…ぴ‥き‥ひつ‥じ…)

ガタッ!!

(!!!)

漸く心地よい眠りの中へ落ちていきそうだった私は、不審な音に大きく目を開いた。

(なにっ!?)

傍で聞こえた音に、息を殺して身を固め神経を集中させる。
瞳だけが辺りの様子を確認しようとキョロキョロ動く。
しかし恐怖の為か、体は布団を被ったまま、音のした方へ向ける事は出来なかった。

(何か‥い‥る?)

私は布団の中から、音の正体を探ろうと耳だけを欹てる。

と、再びカタッ、という音が耳に入ってきた。

(ど、泥棒?)

一瞬脳裏に嫌な言葉が浮かぶ。

『20歳女性 深夜に暴行され死亡』

サーッ―――………

血の気が退く。

(いやいやいや、そんなの困るっ、バイトと学業に明け暮れて恋らしい恋なんてまだした事ないのにっ、殺されるなんて絶対イやっ!)

私は音をたてないように静かに布団から頭を出す。
そして枕元にある目覚まし時計を手探りで探すと、そっと手を伸ばしてそれを掴んだ。

(ただでなんてヤラれてやるもんかっ!ヤラれる前にヤッテやるっ!)

掴んだ時計をもう一度布団の中に仕舞うと、その状態のまま好機を待つ。

(さぁ、来てみろ、返り討ちにしてくれるわ!)

息を殺して侵入者の様子を伺う。
と、ベッドの直ぐ横で何やら動く気配に気付いた。

(き、来たっ!)

私は目覚まし時計を握った両手に力を込める。
ドクン、ドクンと早鐘を打つ心臓の音がすぐ近くで聞こえる。

(まだよ、まだよ、まだよ)

息を殺して待つこと、どの位か。

カサッ!!

今度はさっきよりも遥かに身近で音がした。
と、その刹那

「そこだっ!!」

私は大声と共に布団をひっぺ返して気配のした場所に、思いっきリ力いっぱい、目覚まし時計を投げ付けた。
そして悲鳴を上げる。

「きゃ〜っっっっっ!!!」

断末魔の叫び声が、寝静まった屋敷内に木霊する。

ゴンッ!!

「痛ってぇ〜っっっっっ!!!」


それから少し遅れて、確実に何かに目覚まし時計が当たった鈍い音と、男の叫び声が私の耳に響いてきた。


「っ痛ぇ〜。誰だっ、何すんだよ!!」

男は、恐らくその場で蹲りながら私に叫んできた。

「何するって、こっちのセリフなんですけどっ!」

私も負けじと反論する。

恐ろしくてベッド横の壁に背中を預けたまま動けず、電気も点けられないまま暗闇の中で私は対峙する。
侵入者に恐れながらも言い合えるのは、真っ暗でお互いの顔が見えないからだ。
今なら気丈に振舞える。

「深夜に他人の部屋に入ってきて、ただで済むと思ってるんですか!」

私は暗闇の中を睨みつける。
と男から返事が返ってきた。

「はぁ〜?他人の部屋だって?ここは空き部屋だろうがっ!」

男は意味が分からない、といった言い方をする。

「空き部屋?確かに昨日まではそうでしたが、今は私の部屋です!さっき大声で叫びましたからきっと直ぐに誰かが来てくれる筈です、そしたらもう終わりですよ!」

強い口調で男に言うと、男は体制を立て直してその場に座り込んだみたいだった。

「お前の部屋だぁ?訳わかんねぇよ。、っていうかお前誰だよ!」

「えっ?だからそれはこっちのセリフで…」

そう言い掛けた時、先程まで隠れていた月が静かに現れて、窓の外から仄かに月光が差し込んだ。

そして私は男がいる闇の空間に光る物を見つけた。

「金色…?何?」

しかしそれは一瞬の事で、すぐに又部屋の中を暗闇が支配した。


バンッ!!
パチッ!

突然入口のドアが開く。。
とその途端急に部屋の中が明るくなった。

「!眩しいっ、」

少し暗闇に慣れ始めていた私の瞳は、突然点けられた部屋の電気が眩しくて瞳を閉じた。

「君っ、大丈夫っ?」

慌てた名波 一の声が耳に入ってきた。

嬉しくて私は彼に振り向いて答える。

「はいっ!大丈夫で…」

そこまで言い掛けたところで名波 一の驚いた声に打ち消されてしまう。

「レオっ!?」

私は名波 一の目線を追う。

そこには部屋の明かりに照らされた、眩いばかりの黄金の髪を持つ青年が、額に手を当て胡坐を組んで床に座り込んでいた。

「よお、ハジメ」

そう言うと小金色をした頭の彼は名波 一にニッ、と笑った。


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