8 凛としも 木枯らし受けて 早鐘の 冬はいい。色々なものを着ることが出来る。今の手提げは厚手の端布を集めてパッチし、裏地にお気に入りだった絹の風呂敷を当てたものだ。出来栄えも気に入っている。 手袋はほとんどしない。そのまま手提げを持ち、コートの襟を立てて玄関を出た。 「お出かけですか」隣家の博美が声をかけてきた。「はーい」今日の私は顔も見て応じた。少し前までの目つきと違って近頃の隣人は、いつも感心したような素振りになっている。 悪くない、と思った時、突然携帯がなった。 家政婦協会からだろう。仕事が急に中止になったと言うことか。でも、違った。 「間山の妻です」と、かすれた声が返って来た。 「まやま」は私の周りにはいない。しかしすぐ思い出した。 最初仕事を依頼された時、「万万一のために聞かせて欲しい」と、間山の依頼者の智子がしつこく問うたのを思い出した。 私は「教えないことにしているのです。」と応えていた。「私の方はあなたの緊急連絡先を聞いていますから、何かあったら必ず連絡しますよ。早め早めに。」
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