7 「時刻む」つづき
私は意地悪になる。昔だと考えられない自分の振る舞いだ。 「あまり時間を気にしていたら逆に先がなくなりますよ」と、またからかってやった。間山は死ぬような人間でない。だから安心してしゃべった。 間山は私の冗談に早口で反論してきた。 「どうして私が死ななければならないのか。私が何か悪いことをしたか。私は仕事をサボったこともない。家族を大事にしてきた。浮気などしたこともない。神様は何を考えているのか。悪党は生かし、善人であるはずの自分を何故殺すのか。神など信じられない。」 私が相槌の打ちようがないでいると、「あなたはどう思っているのか。」と来た。 ちょっとしつこ過ぎないか。むきになられると冗談も言えない。私は少し嫌になり、ちょっとだけだが後悔もした。汗が出て来た。部屋の温度のせいではない。封印しているはずの私の神経質が露になりかけた。「帰りの時間ですから。」と間山のロッカーに向った。 引き出しに入れさせてもらっている自分の外出着を手に、トイレの方にきびすを返した。 障碍者トイレが使用される時間は調べている。でも急に使う人もいる訳だから短時間で済ます。ドアが「どんどん」と鳴ればいつでも飛び出せる心積りで着替える。私は、入院患者の「身内」だが身内でない。プロとして、病院が不都合と考える事態を避けるだけだ。
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