5 「残暑日」つづき
それでも展示品は自分の制作のヒントになる。刺激を受ける。次の制作意欲が出てくる。一人の例外を除けば近頃パッチ仲間と会うこともない。知人を避けている。だから展示会で刺激を受けたくなるのだ。 今の九州大学付属病院からは、近くの駅からそのまま家に戻れた。短い時間だと、自分のおしゃれを見る人が少なくなる。それでもよかった。おしゃれも自分だけが見て楽しむようになっている。誰かに見て貰う気など今はない。仕事以外の化粧も控え目だ。 今日でまた一つの仕事は終った。数日後には新しいお客さんの入院している病院に行く。 福岡市内も近辺がいい。帰る時は遠ければ遠いなりにあちこち立ち寄って楽しめるけど、勤めに出る時、遠いと嫌になる。 と願っていたら癌センターの仕事が入った。天神から大橋まで10分余電車に乗り、癌センター行きのバスに乗り換えて20分位だろうか。福間より近いが、今度も1時間以上前に家を出ないと間に合わない。正直ちょっと面倒だ。でも仕事があるのはいつも嬉しい。 今度の患者は元気そう。奥さんが1週間来れない間の仕事だ。若い。54歳だという。高校の教員らしい。と言っても私は患者の仕事が何であるかに興味はない。 いつものことだが感情を排してすべきことをする。一々患者の背景を考えていたら仕事が鈍る。それでも時々「背景」に刺激を受ける。それがこの仕事の隠された魅力でもある。
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