3 「カール髪」つづき
私達は終点の新装なった福間駅前でバスを降り、軽く頭を下げ合って別々になった。 今の病院で仕事をするようになってからは、私は福間から博多まで電車で戻り、地下鉄に乗り換え、誰もいなくなっている西新の我家に戻る。今日もそうだ。 首までボタンのある白いシャツが私は好きだ。年甲斐もなくなどと言われたくない。 昨夜出勤して着替えた仕事中の服は、グレーの上下服。「作業着」の店で買った奴だ。洗濯のために持ち帰らない限り、仕事期間中は病院の患者のロッカーの引き出しに入れさせて貰っている。私は、病院側からは患者の身内と言うことになっている。 今着ているフリルのついたスカートも私の好みだ。仕事中の印象とは全く異なる私の普通の装い。いつからこんなギャップを好むようになったかも忘れた。だが我ながら気に入っている。私だけが知っている変身だ。化粧も仕事中の濃い目のは洗い落として今いる。 バッグはパッチワークして自分で作ったものだ。仕事中、お客さんつまり私の患者の部屋に持ち込むのは生協の白い布バッグだから、それとは布であることが似ているだけだ。 緩やかにパーマした髪が風でなびいた。仕事中はもちろん後部でしっかり結んでいる。仕事が終ればその黒紐を外す。だから今はさっきまで仕事していた人だと思う人もいまい。 仕事の余韻を残すものは何も身につけない。私は気持ちよい朝をいつも歩く。
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