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作品名:夜を守る 作者:あるが  まま

第26回   26 喉切開 真っ赤なリンゴに 唇で
26 喉切開 真っ赤なリンゴに 唇で

福岡養護学校も数年前から「特別支援学校」と呼ぶことがある。私はそうなった事情が分らない。関西に住む当時の友達から10年程前に聞いたことがあった。障がい者運動の一環で、「障害児」でなく「啓発児」「啓聴児」「啓視児」等と呼び名していた。が、これら先人のそんな事情、そんな思想なんぞは軽視しているだろう呼称変更に、役人たちの自己満足を私は見てしまう。
数ヶ月前に大相撲の見学介助等した美代の母雪乃から「紹介してもらった」、と宏二の母親の勝子は依頼の時に私に伝えていた。障碍児者の親たちのネットワークはかなり緊密なのだろう。
宏二は声が出ない。声帯を切り取っているからだ。それでも、私に向って「オバチャン」と言うのは私でもすぐ分るようになった。唇を見て判断しているのだから、ある種の読唇術である。
筋ジストロフィーは、皆同じかと思っていたら違った。小さな驚きである。
もう15年も前のことだが、久留米に行っていた時、筋ジス患者のグループだと言う触れ込みの音楽会に入場したことがあった。ビートルズの「イエスタデイ」などを歌った。ボーカルの子が可愛くて、それだけで来てよかったと思った。彼等は病に苦しんでいるが、実に賢く魅力的だった。


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