17 「おせち料理」つづき
私は料理教室によく通う。結婚する前も花嫁修業として学校に通っていた。NHKの『きょうの料理』で学ぶのは当然の務めだとずっと考え実行してきた。 子どもが生まれてからは秋人とそういう料理の話は少なくなっていた。それも当然だし、話すことは他に色々あった。政治に興味はない。だが、経済は面白くなっていた。株の動向に少し興味も出ていた。だから料理の話がなくても不満でなかったし不安を感じることもなかった。自分で一人努力するだけだった。 しかし、今は違う。夫のために作る料理ではなくなった。秋人が何を言っても軽く聞き流すようになった。心躍らせることも無い。料理はあくまで趣味で作っている。プロ並みの腕だ、と秋人が連れて来た秋人の部下からもよく誉められた。時間とお金をかけているのだ。驚かれて当然との気持は今もある。逆に何も言わずに黙黙食べる者を蔑んでいた。 料理以外にも家でする趣味は多かった。結婚したての頃は着物着てお茶を出すのを好んだが、子どもが出来てからはそうしたゆとりはなくなった。しかし、華道はいい。着るものを気にすることなく、材料が見つかれば好きな時に活けることが出来る。季節季節に野の花中心に活けてきた。縫物も編物も好きだ。いずれ和服が縫えるようになったらとも思っていた。しかし、着物を着なくなってからはそうした夢は消えた。替りに端切れを利用したパッチワークが趣味と実益を兼ねて楽しくなっていた。それが今も続いている。
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