13 「どぎまぎの」つづき
今にして断言できるのは、芝居小屋の『蛇女』伝説は差別を公然化して平気だった時代の酷い作り話であることだ。 この作り話を、半世紀を経た今なお、信じている者がいるのはどう言うことか。 そして一族揃ってのお宮参りを大袈裟にする。誰もが、神様は「知らぬ振り」をなさると知ってのことか。私は悲しくなるがそれ以上は付き合う気もない。 さあっ、仕事だ仕事だ。 美代の父の実家から雪乃の突然の電話が入った。学校の先生らの思いつきに見えたが「社会見学」とかで大相撲九州場所を見せるという。急な話はいつでもちょっと嫌だ。でも他に頼める人がいないとなれば、行きがかり上無視できない。仕事が増えた分は賃金が増すのだから結局受け入れることにした。 美代たちの学校、福岡養護学校の近く、新宮中学の裏手に稽古場を置く大相撲部屋もあった。大島部屋だ。車椅子の生徒たちも部屋の朝稽古を毎年一度は見学する。モンゴル出身の力士でも日本人との区別がつかないと美代の学級担任が教えてくれた。 福岡県直方市出身、大関魁皇を見るのもいいですよと雪乃は勧めた。私は大相撲に全く興味はない。しかし介助役で他の親らと行動を共にする外ない。学校からのバスに乗った。
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