10 旧家なり 初詣も にぎにぎと
美代の介助は難しい。 美代は既に17歳になると言う。福岡養護学校の高等部に在籍している。見た目では首などに実年齢を感じさせるものはある。しかし、ちょっと目には車椅子に寝そべった子どもの感じだ。体も小さい。1mを僅かに超えるだけだ。だが意外にも重たく感じる。体がかなり硬直しているから20s弱でも重い。 母親の雪乃はあっけらかんとしている。 「すぐに慣れられますよー」。「ほら、よく食べるでしょう」。 以前私も障碍者の世話をしたことがある。仕事でなくボランティアで、重度障碍児病院の訪問をした際に食事介助も経験していた。しかし仕事となると一切の責任が自分にかかって来るので気楽にはなれない。 それでも三日間だし昼間は学校に行っているのだから何とか出来よう。 「ご夫婦での旅行ですか」とつい家庭の中身に触れてしまった。 雪乃は「そんな気分になりたいでーす」と言葉を一度切った。 そして、深刻な表情を見せた。 「えっ、お父さんの里帰りですか。」私は問うた。 ならば美代ちゃんを連れて行けばいい話ではないか。
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