46 「汗しとど」つづき
上海は、大学卒業後も先輩として恩人として面倒を見てもらっている重盛の会社がある場所だ。恩人に近づける感じもしている。逆の出迎えは難しいが、上海からだと福岡はもとより、蘇州にも泰州にも、またハルビン、ショウ州にも気軽に行くことが出来る。 私を上海外大に導き、Zビザ取得を最も喜んでくれる桑野は、近くの別の大学に移った。禍福はあざなえる縄の如しだが、桑野への感謝の気持ちを抱き続けていく積りだ。 縁の重なりで居場所も決まった。憧れの上海 黄浦河をはさんで万博も開かれている。 バンドとして名高い新旧の象徴的な上海を好きなだけ見ることができる。 誰でもそれぞれの時期にそれぞれの憧れがある。定かでないことも多い。しかし滔々と流れゆく河のその先に、多くの人同様、私も夢を抱いていた。 私は今、黄浦江の岸部に立っている。陳毅の銅像が目の前にある。上海に来る度に見上げる銅像だ。優れていたが故に毛沢東から嫌われた陳毅の像を今も立たせている上海人の気骨を感じる場所だ。ここで私は今、次なる憧れ探しをまた始めることにもなる。 我が人生、自らの意思だけで居場所を定めたのは少なかった。教員になると度重なる人事異動で、想像もしていなかった学校に追いやられ、その都度新たな夢を描き直し、そこて新たな人とも交わり生きてきた。私は中国でも似たことを経験していることになる。 輸送船も遊覧船も走っている。その場所に私は今一人立つことが出来ている。これから二年間、ネオン輝く夜だけでなく、殺風景ですらある昼にも何度もこの場所に立つことになる。私の諸々の憧れが集約されまた描き直されるこの上海。黄浦江は何も言わすに流れている。畢竟、私の憧れ河は己の強い意志の中に存在し続け得ると言うことなのだろう。(完)
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