20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:憧れ河 作者:あるが  まま

第41回   41 「小」なれど 諸々活動 雪ものかは
41 「小」なれど 諸々活動 雪ものかは 
 
北海道の警察官について書く作家に佐々木譲がいる。彼原作のテレビ『警官の血』を2009年夏8月、中国に行く直前に私も観た。「朝日放送50周年記念作品」の一つだった。
その中に警察官身分で北海道大学に入学してくる「潜入捜査官」の話があった。私は、佐々木譲の本も読んだ。作者の年齢が私より少し若いからか、私が札幌で過していた年代より数年後の話が多い。私は、佐々木譲に関心を寄せながら、応援団の私に近づき「仲間」にしたかっただろう同級生岩本のことを思い出した。
私は、入学早々から日中問題にも学生運動にも大いに興味を抱いていた。北海道学生自治会総連合再建大会を前にした頃だった。会場に入場するための「参加券」は要らないかと岩本が声かけてきた。岩本は私と違って身なりもきちんとしていた。冬場のコートは私の父親も持たないものだった。立派なカメラも持っていた。子ども然の私に比し岩本は大人だって、浮ついた感じがない。格別親しくはなかったが、羽織袴の私に「券」を呉れようとした好意に感謝した。しかし残念ながら応援団の行動日と重なっていた。
それからどれくらい経った頃だったか、村瀬喜之たちに岩本が「捜査官=スパイ」であることを知らされた。「仲間」にさせられていた学生二人から事情を聞いたとも言う。
あの時、応援団活動がなかったら私は岩本から貰った「券」で再建大会に出席していたのは確実だ。私の好奇心は、岩本との関わりのきっかけを失っていたことを残念がった。しかし、子ども子どもの私である。「仲間」に入れられていたかも知れない。怖い話だ。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 16041