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作品名:憧れ河 作者:あるが  まま

第27回   27 憧れの 二の字二の字の 雪の跡
27 憧れの 二の字二の字の 雪の跡

 中国でも私は下駄履きである。各地の旅の途中でも、沢山の中国人との語らいのきっかけになる。一度逆の対応に出遭った。黒龍江省日本語教員研修会でだ。 私は省の教育委員会で認められハルビン郊外阿城での会に参加した。中国人教員の集いに初めて参加する喜びで、いつもの下駄でなく特別に思いを込めた下駄で出向いた。
 会場入口で、件の教育委員が私を止めた。朝鮮族の人だ。「下駄履きはちょっと」と言う。私は驚いた。下駄は卑しい履物だとどこで学んだのだろう。
「私は、今日は特別の日だから、亡くなった父が半世紀前から大事にして特別の日にしか履かなかった下駄で参加したのですが。」と言い訳した。自分が子どもの頃、桐下駄で茶の皮の鼻緒に憧れていた話も付け加えた。教育委員は理解し快く認めた。 中国にも朝鮮にも一コマ漫画がある。中国人を足蹴にするデフォルメ化された日本人の下駄が中国人の頭の上にあるのを見た。日本人でなく中国人がその漫画を記憶していたら、人を足蹴にする下駄は歓迎されまい。「坊主憎けりゃ袈裟まで」の類だが。
下駄嫌いは、中国人朝鮮人の中と異なる日本人の中での排除の考えと結びついてきた。
活動的でない危ないと言う。改善されたのも知らず未だに音がしてうるさいとも言う。下卑た履物と見なす。学校では、下駄履きを喫煙飲酒と同じ校則違反の対象にした。
そして、人が買わなくなったから下駄の値段は上がった。片方に安価な靴がある。下駄は簡単に買えなくなった。これが下駄不人気の一番分り易い理由とでも言うのだろうか。


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