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作品名:憧れ河 作者:あるが  まま

第26回   26 「盆踊り」つづき
26 「盆踊り」つづき

民研の鳴り物が始まった。梶田に代わって歌い手の学生が素早く上がった。
「ハー北海めーいーぶーつ」 と澄んだ声だ。歌が始まるや、すぐ合いの手が入った。
(ハ ドウシタ ドウシタ).。私は全く知らない。 民研のメンバーが櫓の横で誰にも見えるよう大きな身振りで踊りつつ合いの手も入れている。私は感心しながら見るだけだ。
「かーずかーず コリャ あーれど ヨー」 (ハ ソレカラドシタ).
「おらがナー おらが国さーの コーリャ ソレサナー 盆踊りヨー」 ...

私は踊ることもなく、賑わいを眺めていた。赤い鼻緒の下駄を履いた大石が私を見つけて近づいて来た。「よかったね。私も嬉しいよ。ほら、半被姿、いいでしょ。もう古くなってるけど、いつか着れると思って捨てずに取っておいたの。ありがとさん。」
まくし立てた後、身体を揺すりながらすぐ輪の中に戻っていった。
「ありがとうございまーす」私は大石の背中に言葉を返した。
左回りだけだったのに右回りが加わった。声を掛け合って踊っている。
(エンヤーコーリャヤット ドッコイジャンジャン コーリャヤットー)
私の耳にも馴染んで来た歌が繰り返された。
一日予定だった。が、翌日も「開け」「開いてくれ」となった。私は困った。
大石は、「いいよ、いいよ」と下駄をカタカタさせて喜んで見せた。
二日目、輪は大きくなった。元気な豊村らに加え、学生の数も増している。大石は再び赤い鼻緒の下駄と半被姿に着替えて現れた。私の手を引き踊りにも誘った。
「来年もやろう」声があちこちで飛んだ。そして終った。


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