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作品名:憧れ河 作者:あるが  まま

第25回   25 盆踊り はっぴ姿も 二重三重
  25 盆踊り はっぴ姿も 二重三重

それまでお盆になっても私は盆踊りに参加することなどなかった。
子どもの頃のお盆と言えば、父の里に行くのが常だった。そして夜、当時は存在していた部落青年団が演じる「にわか芝居」を観に行っていた。威勢のいい掛け声が印象的だ。お花(祝儀)のお礼の文句などは今も耳に残っている。しかし盆踊りはそこではなかった。
自分の家の近くの寺の境内ではあっていた。だが、見に行ったことはない。一度関係ない用事で盆踊り会場の横を通り過ぎて見たことがあった。小母さんやお婆さんたちが義務的に踊っている感じがした。初盆の人を慰める行事ではあるらしい。
そんな私が「平和」と冠しているとは言え、「盆踊り」の裏方をする。不思議である。
自治会長の大石家は児童公園に接している。それでも櫓の場所まで50m以上はある。人の踊りの邪魔にならないように、公園の樹木と櫓までの途中に立てた長い竹とが活躍した。
主催者である札幌市鉄北地区安保共闘会議に北大の多くの学生自治会も参加していた。
この縁で北大のサークルの一つ民謡研究会(民研)も指導を買って出てきたのだ。
共闘会議の事務局長は北大生協労働組合の梶田である。梶田は櫓の上に上がってカンパのお礼をすると共に、参加者を紹介し、感想を述べさせた。
拍手が起きた。それに続いて「わかったア」「早く始めろ」の大声。近所に寮がある工場労働者の一群のようだ。
前の日、配り残していたビラを持ってそこの責任者だと言う豊村に会っていた。その時は、ビラを受け取ってはくれたが、「原水爆反対ね。」と一瞥するだけだった。
その豊村たちが私の方に向って催促している。彼等が来るとは正直想像してなかった。
群れが更に湧いた。


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