29 辞書を「買う」
外国語を勉強するに、辞書は不可欠だと多分誰でも思っているはずだ。作文や翻訳をする場合はなお更だ。 だが、驚くべきことに、この大学の教え子で電子辞書を持っているのは一人二人。紙の『日中両語』辞書でさえ持つのは数人でしかないことを知った。鈍感過ぎた。私はやがてこの学校を去っていく者として、学生らに必死に訴える。 夏休みのバイトは一日12時間拘束されて30元程=430円程は辛い、と思う。でも一日半余分にし、せめて40元(約550円)の携帯用『日中・中日小辞書』を買って欲しいのだ。 日本でも文科省の『教育白書』に貧富の差が学力に影響することを正式に載せたとか。中国でも、電子辞書を殆どが持つ大学と、紙の辞書さえ殆どが持たない大学に二分化されているのだろう。 最後の試験作文に希望を記す者もいた。「バイトを多くし40元の辞書を買う。そしていつか先生の小説の翻訳をしたい」。健気な気配りである。毎度のことながら諸々感激である。
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