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作品名:春節前後を行く《旅は遥かなる記憶を蘇らせる》。 作者:あるが  まま

第17回   17
17 眼下の中国(初9)

 飛行機の席を窓側にとって今回ほどよかったと思うことはそんなに多くはない気がする。
ウルムチから飛び立った飛行機は、天山山脈の一番低い所を通ってトルファン上空を飛ぶ。翼の向こうに天山の険しい山の一部が見えた。同じ高さを飛んでいる感じだ。トルファンを過ぎるとすぐ火焔山が眼下にあった。山に沿ってまっすぐ走る道路はT字になっていて右に曲がると砂漠と私が泊った農民家に向かう。このT字路を左に曲がる道は、翌日そこを通ってハミに向かった道だ。天山山脈がずっと続いていることも実感した。
 東に流れてきた黄河が急北上するのも、そして南下し、更に東向きを経て北東に向かって行くのも目にした。人間との共存など否定せんばかりの険しい山々、砂漠、荒涼とした大地から、人家の密集する都市に変わっていくのも、見て取れた。
地図と時計に、藤井さんに貰った磁石とを側に置き、私は4時間半ずっと窓の外を眺めていた。途方もない広さの長江も上海に着く一時間ほど前に我が飛行機は一度横切った。南京の手前だったのかも知れない。ウルムチから上海近くまでは、トルファンから少し先の東向き以後、終始南東方向にまっすぐ飛んでいたことをも確かめた。
行きは飛行機が遅れて真っ暗で何も見えないこともあり、高いお金を払う羽目になったのにと運の悪さを恨んだりもしていた。が、その遅れがあったからこそ雲燕にもだしその後ご両親にも巡り会えたことを考えると、この往きにしろ、中国の東西4 000q弱を眼下に見た帰りにしろ、高い飛行機代を払ってもなお釣りが何倍にもなって戻ってきた感じだ。
雲燕から届いた「無事ついたか」とのメールにも嬉しく応えることができた
 兎にも角にも、私の、一月に続く二月の17日間の旅は終わった。


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